2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24659020
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山田 健一 九州大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (60346806)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 脂質ラジカル / スピン化合物 / 蛍光 / 酸化ストレス疾患 |
Research Abstract |
脂質ラジカルは脂質膜のような疎水的環境下で多く発生し、ラジカル連鎖反応を引き起こすことによって細胞に膨大な損傷を与える。この脂質ラジカルを検出することができれば、癌、生活習慣病、神経変性疾患など酸化ストレス疾患の治療やメカニズム解明に大きく貢献できることが期待される。そこで本研究では、脂質ラジカルの生成部位が疎水的環境下であること、また、常磁性(ラジカル反応)により蛍光消光現象を制御できることに着目し、脂質ラジカルの高感度検出に向けた疎水環境かつラジカル反応応答型プローブの開発を目的とした。 疎水的環境下での検出のため、疎水的環境下でのみ蛍光を発し、細胞質のような親水的条件下においてはほとんど無蛍光である環境応答性蛍光色素を選択した。また脂質ラジカルの検出および蛍光消光の制御には安定スピン化合物であるニトロキシドを選択した。そこで、これらを結合させた化合物を合成し、様々な溶媒中における励起波長、蛍光波長、蛍光量子収率を算出した。さらに、リポキシゲナーゼを用いて脂質ラジカルを生成させ、合成した化合物と反応させることにより蛍光強度の変化を観測した。 その結果合成した蛍光色素導入ニトロキシドは、水中ではほとんど蛍光を示さないが、疎水的環境においては高い蛍光量子収率を示した。また疎水的環境においてもニトロキシドのラジカルが消失しないと蛍光強度は十分に低く、疎水的環境下における検出に極めて優れていることが分かった。さらに、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸より生成した脂質ラジカルと反応させると従来の蛍光ニトロキシドでは蛍光強度が4,5倍ほどしか増加しなのに対して今回合成したプローブにおいては数十倍増加した。 以上の結果より、環境応答性蛍光団を利用した蛍光ニトロキシドの化合物の開発に成功し、今後培養細胞モデルなどを用いて結合するラジカル中間体の構造推定を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、環境応答性蛍光団を利用した蛍光有機スピン化合物の開発を中心に研究を行った。その結果、脂溶性環境下で脂質ラジカルと結合すると蛍光がONになる新規化合物の開発に成功し当該年度の目標を達成している。さらに、予備検討の結果、培養細胞モデルにも適用できることを見出しており、来年度の研究を行う上での準備が整っている。したがって、上記達成度とした。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果より、環境応答型蛍光ニトロキシド化合物の開発に成功した。そこで次年度は、実際に結合しているラジカル中間体の同定、および培養細胞あるいは実験動物を用いた評価・検証を中心に研究を進める。その結果、一般研究室でも汎用できる脂質ラジカルの蛍光検出と同定が可能な化合物の開発でき、疾患の原因メカニズム解析に大いに貢献できると考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、蛍光ニトロキシド化合物の合成とともに、培養細胞への適用や結合したラジカル中間体の構造推定を行うために、主に物品費(有機化学実験用試薬、生化学実験用試薬、実験動物)として研究費を使用する予定である。また、国内学会で成果発表のため、旅費も計上する。
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Research Products
(3 results)