2012 Fiscal Year Research-status Report
核移行糖転移酵素を用いた核内Nーアセチルグルコサミン修飾タンパク質同定法の確立
Project/Area Number |
24659026
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山本 一夫 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (20174782)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 糖鎖 / 翻訳後修飾 / 核内タンパク質 |
Research Abstract |
ヒストンや転写因子等の核内タンパク質に付加されるβ-N-アセチルグルコサミン(O-GlcNAc)修飾は、小胞体やゴルジ体で起こる糖鎖修飾とは異なり、細胞の増殖・分化に必須のメカニズムであることが近年明らかになりつつある。本研究では、本来細胞質内には存在しないN-アセチルガラクトサミン転移酵素を核内に発現させることにより、O-GlcNAcを伸長させて安定な糖鎖に導き、どのタンパク質のどのアミノ酸残基がO-GlcNAc修飾を受けたかという履歴を、網羅的かつ正確に特定する新規手法の確立を目的としている。 本年度は、N-アセチルガラクトサミン転移酵素及び対照としてガラクトース転移酵素をコードするcDNAに核移行シグナル及びMycタグ配列を付加したcDNAを作製した。これらを発現ベクターpGACCSに組み込みHEK293細胞にトランスフェクションし、そのライセートから核画分・細胞質画分を分画し比較したところ、核移行シグナル配列の有無は酵素の局在に大きくは影響しなかった。糖が転移した構造を認識するプローブとしてヤマフジ、ノダフジ、ナツフジの種子からレクチンを精製し、O-GlcNAcの検出に用いた。O-GlcNAc転移酵素、N-アセチルガラクトサミン転移酵素の細胞内での発現も確認でき、O-GlcNAc加水分解酵素の阻害剤thiamet G処理条件下で基質となるタンパク質の糖鎖修飾を観察した。基質としてはFLAGタグを付加したヒストンH2A, H3, H4の遺伝子を同時に細胞内に発現させ、抗FLAG抗体でプルダウンしたバンドについて検討したが、レクチン染色による明確なバンドが観察されなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験の遂行に必要な遺伝子やレクチン等の材料も全て揃い、発現の確認もできていることから、実験系は順調に動いている。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1) O-GlcNAc糖伸長タンパク質のアフィニティ精製:3種類のレクチンを大量に精製したので、糖転移酵素等を発現させた細胞の核画分をこれらレクチンカラムにかけ、結合するタンパク質を回収する。二次元電気泳動とWFAレクチンを用いたウエスタンブロッティングによりスポットを特定すると共に、回収されたタンパク質混合物をトリプシンで消化し、再度、レクチンカラムに結合する画分を回収することにより、O-GlcNAc糖伸長糖鎖をもつペプチド断片を取得する。 (2) O-GlcNAc糖伸長タンパク質の同定と修飾残基の特定:2次元電気泳動及びレクチン染色により特定されたスポットは、ゲル内トリプシン消化、質量分析MALDI-TOF/TOFによりタンパク質の同定を行う。一方、トリプシン消化物のうちレクチンに結合した画分は、次にナノLCを用いて分取し、各フラクションを直接MALDI-TOF/TOF質量分析計により解析し、アミノ酸配列の決定、糖鎖修飾の位置の特定を行う。 (3) O-GlcNAc修飾タンパク質変異体を用いた分化・増殖に及ぼす影響の検討:特定したタンパク質のO-GlcNAc修飾が、細胞の分化・増殖に影響していることの検証として、細胞を分化・誘導した後に細胞内での局在の変化を比較する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
細胞培養用試薬・器具、遺伝子を導入する試薬等、タンパク質を同定するための抗体、質量分析による同定に用いる試薬・器具等に用いる予定である。また、成果を発表するために学会への参加、及び論文投稿に関する費用も予定している。
|