2013 Fiscal Year Annual Research Report
大脳皮質神経前駆細胞の増殖を制御する新たな分子基盤の探索
Project/Area Number |
24659031
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
加藤 裕教 京都大学, 生命科学研究科, 准教授 (50303847)
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Keywords | 細胞・組織 / シグナル伝達 / 脳・神経 / 発生 |
Research Abstract |
大脳皮質は哺乳類において特に発達しており、非常に多くの神経細胞からなる特徴的な層構造が形成される。大脳皮質の発達初期において、神経前駆細胞が一度神経細胞へと分化するとそれ以上増殖することができないため、神経前駆細胞の増殖を制御することは大脳皮質の神経細胞の総数を決定し機能的な大脳皮質を形成する過程において非常に重要な要素であるが、その分子機構に関してはまだ一部しか理解されていないのが現状である。本研究では、胎生16日齢のマウス大脳皮質の脳室帯に強く発現していることが認められたsrGAP3について、srGAP3対する活性変異体や特異的ショートヘアピンRNAの作成を行った。これらを蛍光蛋白YFPを同時に発現するベクターに挿入し、子宮内エレクトロポレーション法を用いて神経細胞分化前の神経前駆細胞に導入した。その後、神経前駆細胞の増殖や神経細胞への分化に対する影響を調べた。srGAP3はRac1に対するGAP活性を持つタンパク質であり、脳ではスプライシングバリアントのsrGAP3a、srGAP3bが発現している。これまでに統合失調症や3p-症候群など遺伝的脳疾患に強い関連が示唆されているタンパク質ではあるものの、生体内における機能についてはあまりよく解明されていない。そこでsrGAP3a、b両方に対するショートヘアピンRNA(shRNA)を大脳皮質神経前駆細胞に導入したところ、神経細胞の移動の著しい遅延が見られた。また移動中の神経細胞の先導端が、コントロール群に比べてより長く伸長することが示された。逆に野生型のsrGAP3a及びbを過剰発現させると、双方ともにコントロール群に比べて短い先導端が見られた。これらの結果から、srGAP3は大脳皮質発生初期の神経細胞の移動に関わっている可能性が示唆された。
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