2012 Fiscal Year Research-status Report
新規マイクロRNA分子mirtronから明らかにする哺乳類の神経構築制御機構
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24659033
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
水口 裕之 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (50311387)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | mirtron / 交感神経 / セロトニン |
Research Abstract |
本年度は、mir-877の標的としてこれまでに同定した、セロトニン神経発生の運命決定およびアドレナリン/ノルアドレナリン作動性神経の分化と機能制御に関わる遺伝子Xの発現が、ノックアウト個体で影響を受けているかについて検討した。まず、成体において、交感神経細胞からなる代表的臓器である副腎髄質での発現を、ウェスタンブロッティングにより検討したところ、ノックアウトではX蛋白量の増加が認められた。さらに、X遺伝子によって転写活性化される酵素の副腎髄質における発現量を、免疫染色により検討したところ、有意に増加していた。胎児期の交感神経形成における機能の解析については、神経堤から腹側への移動が起こる時期の神経管に沿った交感神経細胞分布を、免疫染色により観察したところ、予備的検討の段階ではあるが、ノックアウトでは細胞数の増加が認められた。また、胎児期~新生期の脳幹で発現し、脳幹セロトニン神経発生に対して抑制的に働くことから、生後0日の新生仔(P0)脳幹を単離し同様にウェスタンブロッティングにより検討したところ、やはりノックアウトでは増加が認められた。遺伝子Xの発現増加によりセロトニン神経発生が抑制されるとすると、5HT(セロトニン)の発現量が低下することが予想されたため免疫染色で検討したところ、P0脳幹でノックアウトでは有意な減少が認められた。発生の起こる胎児期(E10.5)脳幹の5HT染色を行い検討した結果、陽性細胞が減少する予備的知見が得られている。このように、本年度は、mir877が遺伝子Xを標的として神経機能を調節することを示唆する知見が、個体レベルの検討で得られた。25年度には、欠損による様々な遺伝子発現の変化についてmRNAレベルでの検討を行い、予想される血中モノアミンの変動について解析する。これらの検討が十分に仮説にマッチした場合には、行動解析のステップへと移行する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画に掲げた、交感神経発生と機能についての解析は実際に遂行し、mir877の標的遺伝子がノックアウトマウスで変動した場合に予想される交感神経細胞の機能亢進が、副腎髄質におけるチロシン水酸化酵素の増大という形で観察されたこと、および、その発生時期にさかのぼって影響が認められたことから、期待される表現系とおおむね一致する知見を収集できたと言える。また、中枢性セロトニン神経の発生についても、脳幹縫線核のセロトニン発現を実際に解析し、ノックアウト個体で予想どおり低下している知見を得、これが胎児期にすで起こっていることを観察できた。以上のことより、計画していた個体を用いた行動解析の実施など達成できなかった事項があるものの、今年度に遂行する予定の計画はおおむね7割程度達成できた。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度は、関連遺伝子群のRNA発現変動の解析や、アドレナリン/ノルアドレナリンの血中濃度の解析、組織中セロトニンの定量など、24年度に得られた知見を裏付けるためのさまざまな検討を行う。その結果、セロトニン低下やアドレナリン変動による行動への影響が十分に期待できることが判断されれば、個体を用いた不安水準に関するさまざまな行動解析へと発展させる。当初計画では、mir-877の成熟化因子の同定を当年度に記載したが、現時点では、前述の解析に最も力を注ぐべきと考えられる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度の繰越額はすべて次年度物品費に充てる計画である。
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