2012 Fiscal Year Research-status Report
巨大分泌蛋白質リーリンの「機能増強」は、精神神経疾患の革新的改善法になり得るか?
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24659036
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
服部 光治 名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (60272481)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | リーリン / 脳 / プロテアーゼ / アルツハイマー病 / タンパク質 |
Research Abstract |
(1)リーリン特異的切断を行うプロテアーゼの性状解析 リーリンは特異的切断を受けること、脳では大半がこの分解産物として存在することは既に知られていたが、その分子機構や生理的意義は不明であった。そこでまず、マウス胎児大脳神経細胞の培養上清から、リーリン分解活性を指標にプロテアーゼを部分精製し、性状解析を行った。その結果、リーリンを分解するプロテアーゼは基本的には1種類しかないこと、これがメタロプロテアーゼであり、pro体からFurinなどの別のプロテアーゼによる分解を受けて活性化されること、分子量が約100kDaであること、ヘパリンに親和性を持つことを明らかにした。そしてさらに精製を進め、有力な候補分子を同定した。 (2)リーリン特異的切断の生理的意義解明 リーリンの特異的切断部位が機能にどう影響するのかについては、複数グループから相反する結果が報告されていた。この問題を解決するため、まずFurin阻害剤存在下で細胞培養し「全く分解されていない」リーリンを得ることに成功した。次に部分精製したプロテアーゼとリーリンを混合し、「完全に切断されたリーリン」を調整した。これらを用いて厳密に定量的に解析することで、「切断はリーリンの機能を完全に失わせる」ことを証明した。また、分解部位を「またぐ」エピトープをもつモノクローナル抗体を樹立した。この抗体を用いた免疫染色の結果、リーリンの分解は産生細胞のごく近傍で生じていること、分解産物のうちN末端側のほうはかなり遠くまで拡散する(または積極的に輸送される?)ことを見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リーリン分解を担うプロテアーゼの有力候補同定に成功し、また、リーリンの分解・非分解を見分けるモノクローナル抗体の樹立にも成功した。おおむね計画通り進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
リーリン特異的切断酵素ADAMTS-3の同定と特許申請は、「アルツハイマー病や精神疾患の全く新規ターゲットになる」ということで、製薬企業にも非常に注目されている。現在、複数の大手製薬企業との交渉を開始している。 現在、「ADAMTS-3阻害によりリーリン機能は増強され、そして治療効果が出るか?」「ADAMTS-3阻害によって、副作用は生じないか?」という問題に対する解答を得るべく解析を続けている。これらの結果が得られれば、製薬企業側が一気にスクリーニングに入れる基盤が整う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主に細胞生物学的実験および実験動物を用いた実験のための消耗品に用いる。
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