2012 Fiscal Year Research-status Report
ライブラリー化合物の有効活用を目指した新規生物活性評価手法の構築と応用
Project/Area Number |
24659046
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤井 信孝 京都大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (60109014)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 天然有機化合物 / 化合物ライブラリー / スクリーニング / アッセイ / 生物活性化合物 |
Research Abstract |
本研究は、化合物ライブラリーに含まれる各種天然有機化合物やキラルな合成化合物を有効活用するための新しい化合物探索手法の開発と実証を行うことを目的としている。平成24年度は、タンパク質-タンパク質相互作用を阻害する化合物を探索するためのスクリーニング系の構築について検討を行うとともに、従来の研究を発展させてjaspine Bのジアステレオマー合成の新しいアプローチを確立した。 抗癌剤の分子標的として知られているMDM2やMDMXのp53への結合を阻害する化合物を探索する化合物アレイを用いた評価系の構築を検討した。まず、MDM2およびMDMXについて、固相合成法に用いる各種固相樹脂の比較検討により、フラグメント縮合等の複雑なプロセスを経由しない簡便な化学合成法を確立した。続いて、最終脱保護反応、Huisgen環化付加反応による蛍光標識基の付与、リフォールディングを経てタンパク質を調製した。MDM2およびMDMXは、分光学的手法と表面プラズモン共鳴による解析により、目的の生物活性を示すことを確認した。引き続き、蛍光標識MDM2、MDMXを用いて化合物アレイを用いたスクリーニングを行い、得られたヒット化合物をさらに蛍光偏光法により再評価することで新規阻害剤を同定することに成功した。 また、スフィンゴシンキナーゼ(SphK)阻害活性を示すjaspine Bのジアステレオマーについて、構造最適化研究に適した合成法について検討を行った。Garnerアルデヒドに対する立体選択的アセトキシアリル化により調製したジオールを鍵合成中間体とし、種々の変換反応の後、クロスメタセシス反応により多様なアルキル鎖を持つjaspine B誘導体へと導く合成経路を確立した。これにより得られた誘導体の構造活性相関研究により、jaspine B誘導体のSphK阻害活性に関する新たな知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究では、MDM2およびMDMXタンパク質の化学合成法を確立するとともに、得られたタンパク質がスクリーニングに供する十分な生物活性を示すことを確認した。また、蛍光タンパク質を用いて化合物アレイ解析を行い、複数のMDM2およびMDMX結合化合物を見出すことができた。MDM2・MDMX以外にもタンパク質-タンパク質間相互作用を阻害する化合物探索を行うための予備検討も進めており、平成25年度にはさらなる展開が期待できる。また、jaspine Bの全ジアステレオマーの構造活性相関研究に適用可能な新規合成法を確立し、天然物やスクリーニングヒットからさまざまな立体異性体を効率的に作成するための指針を得た。 全体を通して、2年計画の1年目で予定していた実施計画通りの進捗が達成できたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、化学合成タンパク質の利用による新規タンパク質-タンパク質相互作用阻害剤のスクリーング系の開発を行い、実際のスクリーニングに活用することによりその有用性の実証を行う。 まず、平成24年度までに検討したMDM2・MDMX以外にSH2ドメイン等の安定なドメイン構造を有するタンパク質に検討を拡げ、汎用性が高いタンパク質の化学合成プロセスを確立する。また、スクリーニングから得られたヒット化合物について、各種誘導体の化学合成を行い、構造活性相関情報を得るとともに創薬研究に展開できる有望な化合物の創製へと展開する。このうち、天然有機化合物や複数の立体配置を含む化合物の合成では、文献もしくは研究室の記録をもとに合成を行うだけでなく、新しい合成手法の導入により合成プロセスの効率化についてもあわせて検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
MDM2・MDMXタンパク質の化学合成の過程において、利用した試薬(アミノ酸)の品質が期待通りのものでなかったため、当初予定した活性タンパク質を取得することに難航し、他のタンパク質の調製やスクリーニング計画が当初の予定より遅れることとなった。試薬の再購入等を経て目的の活性タンパク質を得ることができ、また、活性タンパク質の取得のノウハウが蓄積したことから、次年度以降も引き続き新しい化合物探索系の構築に向けて検討を行う。 《物品費》研究のための物品費として、ペプチドの化学合成のための試薬類(精製に用いるシリカゲル等を含む)、固相合成用試薬(樹脂等)、有機溶媒(反応溶媒、クロマトグラフィー用有機溶媒等)、ガラス器具(反応容器等)、分離・精製に用いるHPLC カラム費用、分子プローブの機能評価・定量を行うための生化学試薬類、汎用する器具類を購入する予定である。 《旅費》情報収集を目的とした学会参加、および、学会における研究成果発表に充当する。 《その他》論文投稿料、成果発表のための学会参加費、機器修理費、分析依頼料に充当する。
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Research Products
(7 results)