2012 Fiscal Year Annual Research Report
シスプラチン誘導体の線維化疾患治療薬としてのポテンシャル
Project/Area Number |
24659051
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
小出 隆規 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (70322253)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2013-03-31
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Keywords | コラーゲン / 線維化 / シスプラチン |
Research Abstract |
本研究では、in vitroでのランダム探索から見出されたシスプラチン誘導体の、コラーゲン細線維化阻害活性の分子機構を解析するとともに、類似のPt錯体を含め線維化疾患治療薬としての応用可能性を追求した。 まず活性本体の単離・同定を試みた。In vitroでのコラーゲン細線維化阻害活性は、シスプラチンをDMSOに溶解したときにのみ発現した。このことから、活性本体はシスプラチンとDMSOとが反応して生成した化合物であると推定されていたが、質量分析によりシスプラチン中の塩化物イオンがひとつDMSOに置換した錯体が検出された。類似のPt系抗がん剤を使用した構造-活性相関研究から、同様のPt-DMSO錯体の形成が確認されたトランスプラチンにも細線維化阻害活性があった。一方、同じ様式のDMSO錯体を形成できないPt錯体では活性が検出されなかった。このことから、活性本体は[Pt(NH3)2(Cl)(DMSO)]+と考えられた。 様々なアミノ酸置換を施したコラーゲン様3重らせんペプチドを共存させることによって、シスプラチン-DMSO錯体の細線維化阻害を中和することを試みた。その結果、HisあるいはMetを有するペプチドが、シスプラチン-DMSOの効果を中和しうることを見出した。この結果は、コラーゲン3重らせん上のHisあるいはMet残基がシスプラチン-DMSOのターゲットとなっていることを強く示唆した。 さらに、シスプラチン-DMSO錯体は、ヒト臍帯静脈内皮細胞をもちいた培養系においてもコラーゲン線維の沈着を阻害した。加えて、さまざまな種類の培養細胞に対してシスプラチン-DMSO錯体は、ほとんど毒性を示さないことが明らかになった。 上記結果は、今後のin vivoでの応用研究において有益な知見となったが、本錯体作用のコラーゲンへの特異性については、さらに検討する必要があると考えられる。
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Research Products
(1 results)