2013 Fiscal Year Research-status Report
求核性有機金属の毒性発現を担う分子標的と生体システム
Project/Area Number |
24659058
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
鍜冶 利幸 東京理科大学, 薬学部, 教授 (90204388)
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Keywords | ハイブリッド分子 / 毒性 / 金属毒性学 / 分子標的 / 有害化学物質 |
Research Abstract |
有機―無機ハイブリッド分子(以下,ハイブリッド分子)は合成試薬としてこれまで広く利用されてきたが,その毒性学は未確立である。平成25年度は,材料として第15族元素であるビスマスおよびアンチモンを求核中心とする求核性有機金属化合物の毒性発現とその機構について検討し,以下の結果を得た。 (1)顕著な細胞毒性を示す有機ビスマス化合物(PMTABiおよびDAPBi)のアンチモン置換体(PMTAS, およびDAPSb)は細胞毒性を示さないことを見出した。(2)ジーントラップ挿入変異細胞(チャイニーズハムスター卵巣細胞)ライブラリーから,これらの有機ビスマス化合物に対する感受性低下細胞候補を97クローン獲得し,そこから確実な感受性低下細胞を4種樹立した。(3)PMTABiに対する感受性低下細胞はDAPBiに対しても感受性低下を示し,一方,DAPBiに対する感受性低下細胞はPMTABiに対しても感受性低下を示すことが示唆された。(4)しかしながら,細胞内への有機ビスマス化合物の蓄積は,感受性低下細胞でむしろ高値を示した。(5)シークエンス解析の結果,有機ビスマス化合物感受性低下責任候補遺伝子として,複数の遺伝子が同定された。この中には,細胞の焦点接着に関与し細胞表面から様々なシグナルを伝達するを行うTNS1遺伝子や,核に存在し細胞周期の制御に関与するPPARγ遺伝子およびLMNA遺伝子を含むなどが含まれていた。 以上の結果から,有機金属化合物の毒性は導入金属によって劇的に変化すること,その毒性発現には細胞内への蓄積量だけでなく有機ビスマス化合物に対する防御系が機能していること,および複数の遺伝子が有機ビスマス化合物の毒性発現あるいはそれに対する防御系に関与し得ることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度,第16族元素を含む求核性有機金属化合物について検討し,強い細胞毒性を示す有機テルル化合物のテルル原子を同族のセレンあるいはイオウに置換すると細胞毒性が消失(あるいは顕著に軽減)することを見いだし,感受性低下細胞クローンを獲得することにも成功した。 今年度は,第16族元素を含む化合物について検討を行い,同様に顕著な細胞毒性を示す有機ビスマス化合物(PMTABiおよびDAPBi)のアンチモン置換体(PMTAS, およびDAPSb)は細胞毒性を示さないことを見出し,有機ビスマス化合物に対する感受性低下細胞の樹立に成功した。しかもある特定の有機ビスマス化合物に対する感受性低下細胞は他の有機ビスマス化合物に対しても感受性低下を示すことも明らかにされ,そのメカニズムを示唆する結果も得た。さらに,有機ビスマス化合物感受性低下責任候補遺伝子を複数同定した。 以上の結果は,本研究の2年目の結果として十分な内容を有するものであり,概ね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に明らかにした毒性発現型有機テルル化合物(ジフェニルジテルライド)および平成25年度に研究が進捗した毒性発現型有機ビスマス化合物(PMTABiおよびDAPBi)について,その毒性発現を担う遺伝子を同定する。その遺伝子が多くのcell typeにおいて普遍的に同じ機能を発現していることを確認する。併せて,有機ビスマス化合物に対する防御機構に検討を加える。 また,ジフェニルジテルライドについては,構造中のベンゼン環のパラ位に電子供与基を導入すると毒性が増強し,電子吸引基を導入すると毒性が軽減することを予備的に見つけている。この結果を踏まえ,電子状態解析を行い,電子状態と毒性との関係を研究する新たな試みを開始する。 研究成果を学術論文にまとめ公表する。
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[Journal Article] Glutathione-mediated reversibility of covalent modification of ubiquitin carboxyl-terminal hydrolase L1 by 1,2-naphthoquinone through Cys152, but not Lys42013
Author(s)
Toyama, T., Shinkai, Y., Yazawa, A., Kakehashi, H., Kaji, T., and Kumagai, Y.
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Journal Title
CHEMICO-BIOLOGICAL INTERACTIONS
Volume: 214C
Pages: 41-48
DOI
Peer Reviewed
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