2012 Fiscal Year Research-status Report
乳児・新生児に適用可能な非侵襲的薬物濃度モニタリング技術の開発
Project/Area Number |
24659066
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
山本 康次郎 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70174787)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坡下 真大 群馬大学, 医学部, 助教 (20613384)
青森 達 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40620802)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | TDM |
Research Abstract |
本研究では微量サンプリング技術を用いた薬物治療濃度モニタリング法を確立し、最終的には非侵襲的薬物動態解析法の確立をめざすものである。この目的を達するためには、微量サンプルに含まれる薬物を定量的に測定するための高感度測定技術の確立に加え、従来の静脈採血試料中の薬物濃度と微量サンプル中薬物濃度の関係を明らかにすることが必要である。特に、静脈採血で得られる血液試料とスポット法で用いられる毛細血管由来の血液試料ではヘマトクリット値などが異なる可能性が考えられるため、血液、血漿、血球、細胞外液中の薬物濃度を比較して補正する方法を確立することが必要となる。そこで、従来より取り組んでいた抗HIV薬を対象とし、血漿中および血球中濃度を分離して測定可能な高感度測定法を、蛍光検出器を用いたUPLC法により開発した。 血球細胞中濃度を測定するため血球を加熱処理により分解し、有機溶媒による抽出・精製により濃縮して測定試料とした。ODSカラムで分離後、励起波長235 nm、検出波長337 nmで検出したところ、血球細胞100万個中のダルナビルの検出限界は5 ngまで向上した。一方、血漿中濃度は10μg/mL前後であり、血漿試料中濃度は1μLの検体で測定可能であることがわかった。 HIVは血球細胞中で増殖することから、モニタリングには血球、特に単核球細胞中薬物濃度が重要であると考えられ、その濃度は血漿中濃度との相関は必ずしも高くないことが明らかとなった。非侵襲的採取による検体を用いた薬物治療モニタリングにおいては、血液検体との組成の違いを慎重に考慮する必要があることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非侵襲的微量サンプリング技術を用いた薬物治療濃度モニタリング法の確立においては、微量サンプルに含まれる薬物を定量的に測定するための高感度測定技術の確立、および静脈採血試料中と非侵襲的に得られた微量検体中の薬物濃度の関係を明らかにすることが必要である。 複数のモデル薬物について高感度測定法を開発中であるが、その中で抗HIV薬ダルナビルの高感度定量法の開発に成功し、血漿1μL中の薬物濃度を測定できた。これはマイクロニードルにより採取可能な0.5μLでも応用可能である。また、この方法を血球中細胞濃度測定に応用したところ、血漿中濃度と血球中濃度は必ずしも相関しておらず、非侵襲的微量サンプリング法で得られる検体の構成、特に血球細胞の含有率が重要であることを示唆する結果が得られた。長期的な薬物濃度モニタリングが必要となる免疫抑制剤でも同様の結果が予想されることから、微量サンプリングによる薬物濃度モニタリング技術においては検体の構成を慎重に考慮する必要が明らかとなった。今後、ヘマトクリット値などを用いた補正の方法についても検討を進めるよていである。 現在、免疫抑制剤、抗生物質、抗体製剤など薬物動態特性の異なる複数の薬物について高感度測定法を開発中であり、一部については十分な感度で測定できる見込みである。 スポット法の信頼性については、専用のサンプリングキットが品不足により十分な量が確保できなかったため進展が遅れているが、技術的な問題はないので、今後は予定通りに進捗することが期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
超高感度定量法の確立 これまで蛍光検出器を用いた抗HIV薬ダルナビルの高感度定量法を開発したが、LS-MS/MSの利用によりさらに高感度にする。また、他の抗HIV薬も同時に定量できる方法を開発することにより、臨床検体での検討を進める。抗HIV薬は複数薬剤の同時併用が行われるのが一般的であり、患者検体を用いた研究を行う際は、倫理的な観点から、患者が投与されている関連薬剤すべてを同時定量できることが望ましい。また、薬物動態特性が異なるタクロリムス、シクロスポリンなどの免疫抑制薬、バンコマイシンなどの構成物質についても高感度定量法の開発を引き続き検討する。向精神薬、抗てんかん薬は薬効と薬物濃度の関係を定量的に評価することが困難であるため、今回のモデル薬物には含めないこととする。 スポット法による血液中薬物濃度測定精度の評価微量の血液を試験紙に染み込ませ、その一定面積をパンチして試験紙中の薬物量を測定するスポット法の結果と通常の血漿中薬物濃度測定値を比較して精度を確認する。スポット法においては、ヘマトクリット値や血清脂質濃度などの条件が異なる様々な血液検体を用い、一定面積の試験紙に含まれる血液量および血漿量のバラつきをラベル化した血球および血漿成分を用いて評価するとともに、血液量および血漿量のマーカーとなる内因性物質を探索する。 微量試料を用いた血漿中濃度測定精度の評価 血糖値測定に用いられる穿刺採血を行い、ヘマトクリット管を用いて血漿1~10μL を分取して血漿中濃度測定に用い、通常の静脈採血による結果と比較する。さらに、血液成分を血漿および各種血球分画に分離した後に薬物濃度測定を行い、検体の採取方法が薬物濃度測定値に与える影響を解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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