2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24659069
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 洋史 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (80206523)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 薬剤反応性 / 薬理学 / シグナル伝達 / 癌 / 生体分子 |
Research Abstract |
近年の癌治療において頻用される、sunitinib,sorafenib などのチロシン・キナーゼ阻害薬(TKI)の服用に伴って、高頻度な副作用として「手足症候群」の発症が認められ、時として治療の中断を余儀なくされるほどの重篤な臨床像を呈することが明らかとなってきた。現状では休薬を行う以外に有効な対処法が存在せず、症状がひどい場合には治療の中断や治療強度の低下を余儀なくされるケースも多く、癌という原疾患の重篤性を考慮すると、治療の成否に影響をおよぼす可能性も考えられる。TKI の使用に伴う手足症候群は、capecitabine で観察されるびまん性に発現する症状とは異なっており、特に圧力がかかりやすい皮膚部位に限局して生じる紅斑で始まることが多く、角化が進行しやすく、強い疼痛を伴うケースが多い。申請者らはオフターゲット・キナーゼ(創薬段階で意図されていなかった標的キナーゼ)に対する阻害作用が手足症候群発症にも関与している可能性を想定し、検討を行っている。平成24年度は、ヒト・ケラチノサイト由来のHaCaT細胞およびマウス皮膚より単離した初代培養ケラチノサイトを用い、メカニカルストレスに対する応答性を評価するための培養系を構築した。得られた培養系を用いることで進展刺激を加えた際の細胞生存および遺伝子発現量などを評価する準備が整った。また検討を進める過程で、FLT3およびCSF1Rの阻害によって樹状細胞およびTregひいてはTh1およびTh17の細胞数が変動する可能性が見出され、このことが炎症反応の増悪メカニズムに関与していることを想定している。さらに、VEGFRの阻害を介した血管内皮細胞に対する作用も何らかの形で手足症候群の発現に関与している可能性も浮上した。この点に関してはマウス由来ISOS-1細胞および正常ヒト臍帯静脈内皮細胞を用いて検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度はヒトおよびマウス由来のケラチノサイトおよび血管内皮細胞に関して、メカニカルストレスの影響を評価するため、細胞進展刺激をかける細胞培養系を構築した。また、マウス脾臓内の免疫関連細胞を計測する系も構築した。動物モデルの構築のための検討も開始しており、おおむね順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までの検討を踏まえ、TKIによる手足症候群の発現メカニズムとして以下を想定している。すなわち、①VEGFRに対する阻害作用の存在下にメカノストレスを受けたケラチノサイトから放出されるサイトカインなどが、同様にVEGFR阻害条件下にある血管内皮細胞に影響を与え、炎症の起点となると共に、血球系の細胞の局所への浸潤が生じやすい状況が形成される。さらに、②FLT3/CSF1Rの阻害を介して免疫系のバランス変動が生じ、炎症側に偏っていることが相乗的に作用して、圧力刺激がかかりやすい皮膚部位に限局して強い炎症が生じる。平成25年度は、この仮説に基づいてin vitro / in vivo両面から検討を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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