2012 Fiscal Year Research-status Report
起電性ナトリウム重炭酸イオン共輸送体の機能多様性をつくりだす分子機構解明に向けて
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24659094
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
石川 透 帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (70249960)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 重炭酸イオン / トランスポーター |
Research Abstract |
起電性ナトリウム(Na+)重炭酸イオン(HCO3-)共輸送体(NBCe1)は腎臓、消化管、外分泌腺を構成する上皮細胞やその他多くの非興奮性細胞や興奮性細胞に広く分布し、細胞内pH調節、上皮性HCO3-輸送および体液の酸塩基平衡に重要な役割を果たしている。本研究では3年計画で様々な組織や細胞間で認められる共輸送体機能活性の多様性を作り出す分子機構解明へ向けた新たな手がかりを得たいと考えている。そこで初年度にあたる平成24年度はNBCe1-B(NBCe1のスプライシングバリアントの一つ)の幾つかの細胞内因子による機能調節に関与する分子領域の決定に向けた実験の準備・予備検討とともに、生理的な発現環境におけるNBCe1-B機能の膜電位を介したフィードバック調節の可能性について検討した。すなわち、内因性にNBCe1-B活性を発現する単離ウシ耳下腺腺房細胞を実験系とし、NBCe1-B活性に起因する膜近傍のpH変化により影響を受けるKチャネルの存在の有無についてホールセルパッチクランプ法を用いて調べた。その結果、ウシ耳下腺腺房細胞には細胞外pH環境の変動に連動して変化する新規K+電流の存在が確認された。また、セルアタッチモードによる単一チャネル記録法を利用した膜電位変動の測定実験により、そのK+電流が膜電位維持に関与する可能性が示唆された。今後もさらにNBCe1-B分子構造およびNBCe1-B分子がさらされている局所環境に注目し、共輸送体機能調節の多様性解明に向けた研究を進めたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
NBCe1-B活性を内因性に発現する単離ウシ耳下腺腺房細胞を実験系として行った予備実験から想定外に非常に興味深い研究結果が得られた。そのため、これらの実験にある程度時間が取られ、当初計画していたウシ耳下腺由来クローン化NBCe1-B(NBCe1のスプライシングバリアントの一つ)を哺乳類由来の培養細胞に一過性に強制発現させた共輸送電流を指標に細胞内Mg感受性およびその他の因子による調節に関与する分子領域の決定に関する実験の準備・予備検討の進展が予定より遅れている。従って、研究目的の達成度としては想定外の新たな展開も含めプラス面はあるもののやや遅れていると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
NBCe1-Bの細胞内Mg感受性およびその他の因子(特に細胞内pH)による調節に関与する分子領域の決定に関する予備検討(種々の分子変異体作製も含む)をより加速させるとともに、想定外にウシ耳下腺腺房細胞で見つかった細胞外pH依存性K電流によるNBCe1-B活性のフィードバック調節機構の可能性についても並行して総合的に進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
細胞内Mg感受性およびその他の因子(特に細胞内pH)による調節に関与する分子領域の決定に関する予備検討(種々の分子変異体作製も含む)が遅れていたので、当初の予定より分子生物学的な試薬等の購入費が次年度使用額として残った。これらは次年度の分子生物学実験に必要なキットや試薬の購入にあてる。翌年度分として請求した助成金は分子生物学・電気生理学実験および解析の遂行に必要な物品(キットや試薬等の消耗品や解析用ソフトウエア等を含む)を無駄なく有効的に活用する。
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