2014 Fiscal Year Research-status Report
起電性ナトリウム重炭酸イオン共輸送体の機能多様性をつくりだす分子機構解明に向けて
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24659094
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
石川 透 帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (70249960)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | NBCe1-B / Kチャンネル / 細胞内Na |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では起電性ナトリウム(Na+)重炭酸イオン(HCO3-)共輸送体(NBCe1-B)の異所性強制発現系とともに、NBCe1-Bの内因性発現系としてウシ耳下腺腺房細胞(BPA)を使用し、生体の広範な組織や細胞間で認められるNBCe1-B機能活性の多様性を作り出す分子機構解明へ向けて実験を進めている。これまでの研究により、非刺激時のBPA細胞には細胞外(膜近傍)pH変動により影響を受けるK+電流の存在が示唆されており、このK+電流の変化によりもたらされる静止膜膜電位変化が間接的にNBCe1-B機能を調節しうる可能性がある。平成26年度はNBCe1-B活性に依存して細胞内(膜近傍)Na+変動により誘発されるK+電流の有無について非刺激時のBPA細胞にホールセルパッチクランプ法を適用し検討した。EGTAを用いて遊離Ca2+濃度を10-9M以下に調整したK-glutamate(80mM)を含む溶液を細胞内溶液とした。また、細胞内溶液のNa+濃度は10mMから50mMとし、細胞外液はNa-glutamateに富む溶液(5mM K+を含む)とした。このような実験条件下では細胞内Na+濃度の増加に伴うK+電流密度の顕著な増加は生理的膜電位の範囲内では観察されなかった。また細胞外液にK +チャネルブロッカーを添加してブロッカー感受性電流に対しても同様な実験(ピペット溶液のK +濃度やNa+濃度条件は異なる)を行ったが、やはり生理的膜電位の範囲内では顕著な増加は認められなかった。これらの結果から、非刺激時のBPA細胞には細胞内Na+濃度増加により誘発されるようなK +電流は生理的膜電位付近には存在しない可能性が示唆された。今後、さらにBPA細胞を用いて細胞内pHや細胞内HCO3-変動と関連して影響されるような膜電流の有無や細胞外pH感受性K +電流を担う分子基盤などについて検討を進め、NBCe1-B機能調節の多様性解明に向けてアプローチしたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
26年度はNBCe1-B活性を内因性発現するウシ耳下腺腺房細胞(BPA細胞)を用いて細胞内Na+濃度依存性に活性化されるようなK+電流の有無について検討した。また、これらの実験に加え、本研究プロジェクトの展開にも関連性がある他の膜電流に関する知見のまとめ等に時間が取られたこともあり、当初計画していた細胞内Mg2+やpH変化によるNBCe1-B調節に関与する分子領域の決定に関する実験の進展が予定よりかなり遅れた。従って、研究目的の達成度としては遅れていると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究によりウシ耳下腺腺房細胞にはNBCe1-B活性に間接的に影響を及ぼす可能性があるpH感受性K+チャネルが存在すること、また生理的膜電位の範囲内では細胞内Na+濃度依存性に活性化されるようなK+電流は存在しない可能性が示唆されている。今後、NBCe1-Bとの共発現系を用いた研究をも視野に入れてpH感受性K+チャネルの分子基盤の同定を進める必要がある。また、異種性強制発現系を用いたNBCe1-Bの細胞内Mg2+感受性や細胞内pHの影響に関係する詳細な分子領域の決定に関する検討をさらに推進させることにより、総合的に研究を進めたいと考えている。
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Causes of Carryover |
ウシ耳下腺腺房細胞に内因性発現するNBCe1-B機能調節因子としてのK+チャネルの可能性について調べる必要があったため、NBCe1-Bの細胞内Mg2+感受性および細胞内pHによるMg2+感受性の調節に関与する分子領域の決定に関する検討が予定より大幅に遅れた。そのため当初予定していた分子生物学的な試薬等の購入費が次年度使用額として残った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
未使用額は次年度の分子生物学・電気生理学実験および解析遂行に向けて必要な物品(キットや試薬等の消耗品等を含む)等の購入にあてる。
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