2012 Fiscal Year Research-status Report
痛み(感覚)センサーとしての筋膜の新たな基礎医学的役割の確立
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24659106
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
田口 徹 名古屋大学, 環境医学研究所, 助教 (90464156)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 筋・筋膜性疼痛 / 侵害受容器 / 痛み / 筋-筋膜間相互作用 / 感覚センサー |
Research Abstract |
筋膜は肩こりや腰痛患者の痛みのソースとして、あるいは治療のターゲットとして重要視されるが、そもそも筋膜が痛み受容を担うという実証はなかった。H24年度は主として正常時における筋膜侵害受容の神経機構を明らかにした。具体的には、1)カルシトニン遺伝子関連ぺプチド、Peripherinを神経マーカーとし、下腿筋膜における侵害受容線維の分布を明らかにした。2)筋膜への痛み刺激に応じる侵害受容器(細径線維受容器、Aδ-線維、C線維)を同定し、その反応特性を解明した。中でも筋膜C線維受容器の43%は機械・化学・熱刺激に応じるポリモーダル受容器であることがわかった。3)筋膜からの末梢侵害入力がL2~L4脊髄後角表層の内外側中央部に投射することを明らかにした。これらの知見は筋膜がこれまでに考えられてきたように単なる支持組織ではなく、生体においてよりダイナミックな役割を担うことを示す画期的な研究成果であり、忘れ去られた組織“筋膜”に新しい生理・解剖学的役割を付与するものである。さらに、当初の実験計画にはなかったが、筋膜の正常組織像を明らかにし、筋膜内の血管分布様式を解明しつつある。これまでに、筋膜の血管平滑筋が筋膜全体をゆっくりと収縮させ、筋・筋膜組織の張力維持に寄与する可能性がわかってきた。また、筋膜侵害受容の病態(痛覚過敏)時における変容についても着手し、筋膜が正常時のみならず、痛覚過敏時の痛み受容にも関与する重要な感覚センサー組織である可能性を明らかにしつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
筋膜の侵害受容(痛み受容)に関する末梢神経・脊髄機構の一端が明らかになり、 おおむね順調に成果が出ている。これに関する学会発表(招待講演を含む)や論文、また著書の執筆も行った。また、当初の計画にはなかったが、アクティブな収縮エレメントとしての筋膜の新しい役割についても明らかになりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
H24年度は主として、正常時の筋膜の侵害受容に関する研究成果を得た。H25年度以降は、痛覚過敏モデルを用いた病態時の変化やそのメカニズムを中心に進める。 また、当初は計画していなかったが、アクティブな収縮エレメントとしての筋膜の新しい役割についても明らかにし、忘れ去られた筋膜組織の新しい基礎医学的役割の確立を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
筋膜への定量的ピンチ刺激に必要な装置をH24年度に購入予定であったが、刺激方法を較正ピンセットで代用できたため、出費が抑えられた。H25年度はこの分をアクティブな収縮エレメントとしての筋膜の新しい役割に関する研究に使用する。微弱な筋膜の収縮能を計測できるフォースランスデューサシステムの購入などに充てる予定である。
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