2012 Fiscal Year Research-status Report
ミクログリアにオルタナティブ活性化を指向させる低分子量化合物
Project/Area Number |
24659118
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
香月 博志 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 教授 (40240733)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ミクログリア / インターロイキン-4 / アルギナーゼ |
Research Abstract |
脳内ミクログリアは、組織傷害性に働く「古典的活性化状態」と組織保護・修復性に働く「オルタナティブ活性化」と呼ばれる異なる活性化状態を取り得る。本研究は、ミクログリアのオルタナティブ活性化を誘導する細胞内外シグナル伝達機序の解析を行うとともに、病態脳内のミクログリアを組織保護・修復性に指向させる化合物の探索・同定を企図した。 ミクログリア系細胞株BV-2細胞にIL-4を処置すると、オルタナティブ活性化マーカーであるアルギナーゼ-1やYm-1などの発現が亢進し、これはJAK阻害薬により抑制された。また翻訳阻害薬のシクロヘキシミドによってオルタナティブ活性化マーカーの発現がmRNAレベルで遮断されたことから、IL-4刺激後の何らかのタンパク質性因子のde novo合成がオルタナティブ活性化の誘導に必須であることが示唆された。そこで当該因子の分子実体について探索を進めた結果、転写調節因子IRF4が同定された。すなわち、BV-2細胞にIL-4を処置するとIRF4の発現が増大し、これはJAK阻害薬によって抑制された。また、siRNAによってIRF4の発現を抑制すると、IL-4によるアルギナーゼ-1の発現誘導が著明に抑制された。さらに、IL-4によるアルギナーゼ-1の発現誘導は、プロテインキナーゼA阻害薬によって抑制され、アデニル酸シクラーゼ活性化薬によって増強されたことから、オルタナティブ活性化の誘導においてJAK/STAT経路とcAMP経路が協調的に働く可能性が示された。一方、古典的活性化を誘導するリポ多糖をIL-4と共処置すると、IRF4の発現誘導が抑制されるとともに、オルタナティブ活性化マーカーの発現も著明に抑制された。以上の結果から、ミクログリアの古典的活性化とオルタナティブ活性化との間のスイッチング機構においてIRF4が中心的役割を担う可能性が初めて明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究目的のうち、ミクログリアのオルタナティブ活性化を誘導する細胞内外シグナル伝達機序を解明するという点に関して、IRF4の介在する新規の活性化スイッチング機構を突き止めることができた。また、オルタナティブ活性化を促進する低分子量化合物の探索・同定についても検討を進めており、現在までにある種の神経伝達物質関連化合物にそのような活性を認めている。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 引き続き、オルタナティブ活性化を促進する低分子量化合物の探索を進める。有効性の認められた化合物については、その作用機序についてBV-2細胞および初代培養ミクログリアを用いて解析を行う。作用機序解析は主として、IL-4の細胞内シグナル伝達経路のどの段階で亢進作用が発揮されるのかに焦点を当てて進める。 2. 培養細胞系において有効性の認められた化合物については、培養ラット脳組織切片を用いた疾患病態モデル(脳出血についてはトロンビン誘発組織傷害、パーキンソン病についてはドパミン神経毒誘発ニューロン変性)におけるミクログリア活性化状態への影響を調べ、オルタナティブ活性化の亢進効果の有無を検証する。 3. 前項の検討で培養脳組織においても有効性の認められた化合物については、in vivo疾患モデル(脳出血およびパーキンソン病)に投与し、疾患脳組織内のミクログリアの活性化に及ぼす影響について検討する。病態誘発後のミクログリア活性化状態の時間経過に対する影響も考慮して投与スケジュールを設定し、脳組織保護効果および神経症状改善効果についても検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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