2013 Fiscal Year Research-status Report
受容体の立体構造を基盤とするリガンド探索を目指したオーファン受容体の構造解析
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24659132
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小林 拓也 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20311730)
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Keywords | オーファン受容体 / GPCR / 抗体 / X線結晶構造解析 |
Research Abstract |
G蛋白質共役型受容体(GPCR)は細胞膜を7回貫通する特徴的な構造を有し、細胞外からの情報(神経伝達物質、ホルモン、味、光など)を認識する細胞センサーである。また、市販医薬品の5割以上が、GPCRをターゲットにしており、GPCRは重要な創薬ターゲット分子として注目されている。ヒトゲノムプロジェクトにより、遺伝子には約600種のGPCRが存在すると言われている。しかし、今なお約160種のGPCRは内在性リガンドが不明な「オーファン受容体」と呼ばれている。本研究は、GPCRの立体構造を基盤としたリガンドの探索を目指している。そのために、オーファン受容体を発現・精製、結晶化することにより、原子分解能レベルでリガンド結合ドメインの構造を解明したい。将来的には、X線結晶構造解析とシステムバイオロジーを融合させたGPCRの理論的なリガンド分子設計に寄与したい。これまでに酵母において発現の高かった苦味受容体と昆虫細胞において発現の高かった(サーカディアンリズムに深く関連した)GPCRを発現、精製、リポソームに再構築した後、マウスに免疫する(リポソーム免疫法)。スクリーニングには、リポソームELISA法、ドットブロッティング、Biacoreを用いる。本年度は、前年度不安定で精製途中に壊れてしまうGPCRに対して、より安定な変異体をスクリーニングした。C末端に融合したGFPを指標として、N末端や第三細胞内ループに安定化蛋白質(リゾチーム、シトクロームbなど)を融合した。いくつかのGPCRで野生型に比べ、蛍光単分散性を向上させる変異体をスクリーニングすることに成功した。また、コムギ無細胞系でリポソームにオーファン受容体を発現させることができるようになり、これらの受容体を抗原として免疫し、受容体を安定化する抗体を作製する準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
まず始めに1)GPCRを発現、精製し、再構築したプロテオリポソームをマウスに免疫し、次に2)結晶化リガンドとして立体構造認識抗体のスクリーニングを遂行する予定にしていた。酵母において25種類の苦味受容体の高発現株をスクリーニングした結果、最も発現の高かった苦味受容体(TAS2R16, 41など)と昆虫細胞において発現の高かった(サーカディアンリズムに深く関連した)GPCRを順次大量発現・精製を試みたが、精製途中に次々とこれらのGPCRが凝集することが分かり、単一に精製することができなかった。そこで、N末端や第三細胞内ループに、これまでに構造解析で使用されてきた安定化蛋白質(リゾチーム、シトクロームbなど)を融合し、C末端に付加しているGFPを指標とした蛍光単分散性により、安定な変異体をスクリーニングした。その結果、野生型と比較して、より安定な変異体をスクリーニングすることに成功した。また、コムギ無細胞系を用いることにより、リポソームにオーファン受容体を発現することができた。そこで、リポソームに発現させた受容体を抗原としてマウスに免疫し、オーファン受容体の立体構造を認識する抗体を取得する準備を始めた。
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Strategy for Future Research Activity |
安定化蛋白質を融合したオーファン受容体は、昆虫細胞かメタノール資化酵母で大量発現を試みる。精製したオーファン受容体は、単独で脂質キュービックフェーズ法で結晶化を試みる。蒸気拡散法に比べ得られる結晶は小さく、X線回折にはマイクロフォーカスビームを必要とするがGPCRにおいては、これまで比較的良好なデータが得られている。得られた結晶は随時SPring-8で回折実験を行う。GPCRの結晶構造を解くには分解能3Å以上を必要とするので、高分解能の結晶が得られるまで結晶化条件を最適化する必要がある。回折像が全く認められない場合は、新しい結晶化条件を探索する。コムギ無細胞系でリポソームに発現させたGPCRは、サルモネラ菌由来のlipid Aを含むプロテオリポソームとしてマウスに免疫する。一次スクリーニングには、リポソームELISA法を用いる。具体的には、GPCRをビオチン化脂質含有リポソームに再構成し、ストレプトアビジンプレートへ固相化する方法で、立体構造を認識する抗体とフレキシブルな領域(N末端、C末端など)を認識する抗体がスクリーニングされる。スクリーニングされた抗体は、ドットブロッティングを行い、SDSで変性させたGPCR(フレキシブルな領域)を認識する抗体を除去する。二次スクリーニングには、Biacoreを用いる。具体的には、市販のセンサーチップ表面に抗マウスFcフラグメント抗体を固相化し、スクリーニングされたハイブリドーマの培養上清を流して抗体分子を補足させた後、精製GPCRを送液して応答を観測する。観測の済んだチップは、酸性条件で洗浄することで何度でも再生することができる。安定化したオーファン受容体に過剰量の抗体を加え、ゲル濾過により未反応の抗体とGPCR/抗体複合体を分離する。複合体は、微量サンプル結晶化ロボット(モスキート)により結晶化する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
オーファン受容体が思ったより不安定であったため、予定よりもやや遅れている。次年度は、安定化したオーファン受容体の大量発現、精製、結晶化を試みる。また、コムギ無細胞系でリポソームに発現させたオーファン受容体を抗原として免疫し、オーファン受容体の立体構造を認識する抗体をスクリーニングする。オーファン受容体/抗体複合体の結晶化及び構造解析を試みる。 「オーファン受容体の発現、精製」オーファン受容体の発現には、酵母培養培地、昆虫細胞培養培地、血清の購入、精製には、アフィニティーレジン、界面活性剤の購入を考えている。「結晶化リガンドとしての立体構造認識抗体のスクリーニング」 オーファン受容体をコムギ無細胞系で発現させるために発現用の試薬を一式購入する。免疫には、マウス、飼育管理費、抗体のスクリーニングには、ELISA用のストレプトアビジンプレート、酵素標識された二次抗体、Biacore用のセンサーチップ、抗体の大量調整には、ハイブリドーマを使った腹水化費用を考えている。「オーファン受容体単独とオファーン受容体/抗体複合体の結晶化及び構造解析」オーファン受容体/抗体複合体の調整には、ゲル濾過カラム、結晶化には結晶化試薬、結晶化用プレート、脂質の購入、結晶化用ロボットの消耗品費用も含める。
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Research Products
(9 results)