2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24659138
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
三浦 芳樹 久留米大学, 分子生命科学研究所, 講師 (90279240)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ヒスチジンリン酸化 / 抗体 |
Research Abstract |
リン酸化による情報伝達機構は生命を理解する上で最も重要で普遍的な反応のひとつである。しかし、セリン、トレオニンやチロシンのリン酸化反応に比べ、哺乳類でのヒスチジン残基リン酸化反応の解析はまだ研究が少ない。これはリン酸化ヒスチジン残基が化学的に不安定なことと抗リン酸化チロシン抗体の様なリン酸化ヒスチジンを解析する良いツールがないことが原因である。そこで本研究ではこのリン酸化ヒスチジンに対する抗体の開発を目的とする。申請者らはリン酸化ヒスチジンのアナログとして化学的に不安定なN-P結合をC-P結合に置換した非水解性のリン酸化ヒスチジンアナログを含むペプチドをウサギに抗原として用いることにより抗リン酸化ヒスチジンアナログに対する抗体を得られることを明らかにしている。ヌクレオシド2リン酸キナーゼ(NDPK)はATPにより自己ヒスチジン残基をリン酸化することが知られている。前述の抗体はこのNDPKとATP依存的に結合すること、自己リン酸化部位のヒスチジンをフェニルアラニンに置換した変異体とはATP存在下に於いても結合しないことより、リン酸化ヒスチジンを特異的に認識すると考えられた。そこで、リン酸化ヒスチジンアナログ含有ペプチドを抗原としてマウスモノクローナル抗体作成を定法により行った。スクリーニングにはリン酸化ヒスチジンアナログを含むペプチドと自己リン酸化NDPKを用いた。得られた抗体の特異性を調べた所、リン酸化ヒスチジンアナログ含有ペプチドを強く認識し、リン酸化ヒスチジンアナログを他のリン酸化セリン、トレオニン、チロシン残基に置換したペプチドとの反応を調べると僅かにリン酸化セリン残基に対する反応がみられた。これに対し家兎抗リン酸化ヒスチジンンポリクローナル抗体は抗原にしたリン酸化ヒスチジンアナログ含有ペプチドのみに反応し、他のリン酸化アミノ酸とは反応しなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
リン酸化ヒスチジンに対するモノクローナル抗体を得ているが、現時点ではリン酸化アミノ酸に対する特異性が、家兎ポリクローナル抗体に比べ低く、モノクローナル抗体を用いるメリットが少ない。得られた抗体とリン酸化ヒスチジンアナログ導入部位に他のリン酸化アミノ酸(セリン、トレオニン、チロシン)を導入したペプチドに対する反応性を検討した所、リン酸化セリンに対して弱い結合が見られたがリン酸化ヒスチジンアナログに対する結合に比べ低いためリン酸化ヒスチジアナログに対して特異的な抗体が得られているとは考えられた。しかし、A自己ヒスチジン残基リン酸化を行うNDPKに対してATP存在下でその結合が増強されるもののATP非存在下でも弱く結合し、さらに自己リン酸化される118番目のヒスチジン残基をフェニルアラニン残基に置換した変異体(H118F)に対しても弱く結合するなど家兎ポリクローナル抗体に比べ特異性の問題がある。以上の事より、現在得られているクローンより特異性が高い抗体を得るべくスクリーニングを続行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点で得られた抗体の問題点は、その特異性である。リン酸化ヒスチジン残基に対する特異性を上げる為にスクリーニングに用いるリン酸化アナログペプチドの周辺配列を抗原に用いた配列と異なる配列にし、スクリーニングを行うことにより周辺配列による影響を下げる。また、この新しいペプチドを抗原として免疫に用い、新たなハイブリドーマの作製を行う。また、免疫期間の延長に伴い自己リン酸化NDPK特異的な反応の減少が何匹かのマウスで見られたので、NDPK-H118Fと自己リン酸化NDPKとの差が明確に出た時点で脾臓の回収を行い、バイブリドーマを作製する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
哺乳類細胞でヒスチジン残基のリン酸化の報告がなされているタンパク質由来の配列にリン酸化ヒスチジンアナログを導入したペプチドの合成を行う。Ca-Kチャネル3.1もしくはヒストンH4で明らかにされているヒスチジンリン酸化部位周辺配列を用いる。これらは現在使用している三量体Gタンパク質β鎖由来の配列とは大きく異なるため、これらタンパク質の配列を用いることにより周辺配列の影響の少ないリン酸化ヒスチジン特異的な抗体を得られることが期待できる。このペプチド合成費として本年度残金を使用する。
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