2013 Fiscal Year Annual Research Report
細胞融合の分子制御機構と組織の再生・修復および発癌機構における役割
Project/Area Number |
24659146
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 勉 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 講師 (30302798)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松浦 憲 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助教 (10625742)
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Keywords | 細胞融合 / Wnt / 組織修復 / 組織再生 |
Research Abstract |
細胞融合は筋線維、破骨細胞、胎盤のシンシチウムなど様々な細胞・組織の形態形成において必須の役割を果たしており、更に近年の研究により、組織の再生・修復なども含めより広範に生体内で起こり得る現象であることが判明した。また転移・浸潤など腫瘍の悪性化への関与も疑われている。しかし細胞融合の制御機構および具体的な役割ははっきりしていない。私たちはこれまでに独自の成果として、癌化や組織の修復において重要なWntシグナルが細胞融合を制御する事を初めて明らかにしている。組織の修復、あるいは腫瘍の悪性化の機構は未解明の部分が大きく、本研究では細胞融合がその中で果たしている役割とその制御機構の解明に迫ることを目的にした。 最初に我々はin situ hybridizationやRT-PCR法を用い、マウスの組織における融合関連遺伝子Gcm1、SynA、SynBの発現を網羅的に検証した。その結果、一般的な認識と異なり、SynAは脳、肺、肝臓、腸管、皮膚など様々な組織で発現している事、Gcm1は腎臓でのみ、SynBはほとんど発現していない事を明らかにした。さらに傷害修復・再生モデルのdextran sodium sulfate投与モデル(潰瘍性大腸炎モデル)では、大腸での特異的な融合関連遺伝子の発現変化は観察されなかったが、マイルドな傷害が起きるとされる回腸ではSynAの発現上昇が見られた。しかしこれはWntシグナル活性との相関はなかった。さらに腎臓の虚血再灌流傷害モデルでは、傷害を受け強く炎症を起こしている領域で、融合関連遺伝子群が発現上昇する事を明らかにした。今後はさらにこれらの因子が組織の修復・再生の際にどのような働きをしているか検証していく予定である。
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