2012 Fiscal Year Research-status Report
2型糖尿病膵島アミロイドの病因解析とそれを標的とした新規治療法の開発
Project/Area Number |
24659158
|
Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
八木橋 操六 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40111231)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 2型糖尿病 / ランゲルハンス島 / アミロイド / β細胞 / アポトーシス / マクロファージ / サイトカイン / 病理 |
Research Abstract |
ヒト2型糖尿病膵島での最も特徴的な病理所見としてアミロイド沈着がある。このアミロイド沈着は膵島β細胞からインスリンとともに細胞外に分泌されるアミリンというペプチドからなっている。膵島アミロイド沈着と糖尿病の特徴であるβ細胞脱落との関連についてはいまだ不明のままである。 そこで、日本人2型糖尿病膵島でのアミロイド沈着の実態について、これまで蓄積された糖尿病剖検症例の膵49例、対照として非糖尿病50例を病理学的に観察した。免疫4重染色を用いて、膵島占有容積比(Vi)、膵島β、α細胞占有容量比(Vβ,Vα)等について検討した。その結果、日本人2型糖尿病でのVβは対照非糖尿病に比して有意の減少を示した。とくに、アミロイド沈着のない症例ではVβの軽度減少に留まっているが、アミロイド沈着のある例では、Vβの高度減少を示した。すなわち、アミロイド沈着がβ細胞死を促進し、β細胞量の減少に拍車をかけている病態が示された。次に、アミロイド沈着膵島とアミロイド沈着のない膵島とを比較検討した。アミロイド沈着にはアポプロテインEの蓄積が高度であり、同時に膵島内でのマクロファージ浸潤を高度に伴っていた。このことは、脂質代謝異常がβ細胞脱落を促進すること、また膵島内での催炎症反応を亢進させ、究極的なβ細胞脱失をもたらすことを考えさせた。実際、マクロファージ浸潤の高度な膵島では、残存β細胞での酸化ストレス誘導細胞傷害マーカーであるγH2AX発現を高度に認めている。確認のため、剖検膵パラフィン標本からマイクロダイセクションによりDNA, RNA抽出を試みサイトカインmRNA発現のRT-PCRを試みたが、これまでRNA変性のため成功していない。DNA採取は一部の症例で可能であり、今後、β細胞死、β細胞再生因子の遺伝子のエピジェネティックな変化の検討する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2型糖尿病での剖検例を用いたアミロイド沈着の意義については、膨大な標本と詳細な形態計測結果から、当初予想したように膵島β細胞傷害に促進的に作用することが示された。また、そこでは局所におけるマクロファージを介した催炎症反応が重要な役割をもつことも示され、アミロイドのβ細胞傷害機構の概要は説明可能となった。欧米の文献との比較では、わが国での2型糖尿病でのアミロイド沈着は軽微に留まっていた。しかしながら、最近の傾向では、わが国でも次第にアミロイド沈着例が増加している傾向がある。この点も、はっきりとした数値で表現する必要性が求められている。 分子機構をさらに明らかにする目的、また新規治療法へのアプローチのためにはヒト糖尿病から動物モデルへのトランスレーションを試み、実験的治療を試みる必要がある。そのためには、現在勢力をそそいで実施している、膵島マイクロダイセクションによってヒト2型糖尿病での主要な分子変化を、さらに明らかにする必要がある。また、アミロイド沈着のみられない膵島でもβ細胞脱失はみられることから、その違いについても検討する必要がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
1.ヒト2型糖尿病でのアミロイド沈着がもたらす膵島催炎症反応の病理学的解析: アミロイド沈着により膵島では催炎症反応が亢進する。その内容をさらに明らかにするため、M1,M2マクロファージに種類、リンパ球サブセット同定など、「2型糖尿病での膵島炎」病理をより体系化する。また、これらの炎症反応とβ細胞脱落との相関について検討する。 2.2型糖尿病膵島での炎症反応とβ細胞脱落との相互関連の分子解析:ヒト2型糖尿病アミロイド沈着例を欧米でのBMI高値、脂質異常のあるアミロイド沈着例と比較検討し、アポEの意義、マクロファージ機能との関連をみる。またβ細胞傷害のレベルをマイクロダイセクションによって、サイトカインmRNA発現、あるいは膵β細胞増殖、傷害因子遺伝子(p16, p52 pdx-1 etc)についてメチル化などエピジェネティック変化について検討する。 3.2型糖尿病動物モデルGKラットを用いた膵島炎症反応の検討:ヒト2型糖尿病で検討すると同じく、自然発症2型糖尿病モデルであるGKラットを用い、膵島でのマクロファージ、リンパ球サブセット解析、サイトカイン遺伝子発現などを検討する。 4.2型糖尿病動物モデルGKラットでの膵島炎抑制による糖尿病治療の試み:膵島炎がβ細胞脱落を促進する可能性は高いことから、膵島での炎症制御による糖尿病への影響をみる。抗サイトカイン薬剤(mTOR阻害薬、SIP薬など)を投与し、耐糖能への影響をみる。また、アミロイドオリゴマー抗体を投与し、膵島病変が改善するかをみる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
|
Research Products
(16 results)