2012 Fiscal Year Research-status Report
死後臓器組織からの高品質核酸抽出法の考案:病理解剖の分子生物学的探究基盤の確立
Project/Area Number |
24659159
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
高屋敷 典生 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (00364521)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野口 雅之 筑波大学, 医学医療系, 教授 (00198582)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 病理解剖 / 人体病理学 / 核酸 |
Research Abstract |
本研究は、死後のヒト臓器組織から高品質な核酸を抽出し、病理解剖材料を用いた質の高い分子生物学的探究の基盤を確立することが目的である。具体的研究項目は、1.ヒトの各臓器(脳、肺、心臓、肝臓、腎臓、甲状腺、副腎、骨髄、脾臓など)において、死後時間に応じてどれだけ生細胞が残存しているか明らかにする。2.各臓器において、死後時間に応じたゲノムDNAの劣化の程度を明らかにする。3.各臓器組織から変性の少ない細胞のみを選別、回収する方法を検討、開発する。4.病理解剖症例から回収した細胞より抽出したDNAで、エクソンシークエンスを試みる。 平成24年度は筑波大学付属病院における病理解剖時に、摘出された臓器から随時解析用の組織片を採取、保存した。そして採取された骨髄から比重遠心により単核細胞を分離し、生細胞の割合をFACSにて解析した。その結果、症例によっては最大約50%まで骨髄単核細胞の生細胞が存在し、死後18時間後の骨髄でも生細胞が存在することが明らかとなった。次にヒト死後の骨髄全体、分離した単核細胞全体(FACS前)、FACSで選別された生細胞を用いて、各試料のDNAの質について評価した。具体的にはそれぞれの試料におけるヒトβ-globin遺伝子について、long-range PCR法を用いて数種の増幅産物(1.3、2.7、3.6、8.5、17.5 kb)の有無について検討した。その結果、骨髄全体については3.6kbまでの増幅産物が検出された一方、FACS前の単核細胞全体およびFACSで選別された生細胞では8.5kbまでの増幅が確認された。以上より骨髄に関しては、ヒトの死後においても比較的長鎖のDNAが保たれていることが分かり、単核細胞の分離および生細胞が選別回収された試料を用いた場合は、long-range PCR法にてより長鎖の産物の増幅が可能となることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
対象とする病理解剖例は、日常的に不定期で、頻度もそれほど多くないため、現時点では試料採取が予想していたよりも蓄積できていない。また当初の計画では、各臓器組織の細胞分散を実施する予定であったが、病理解剖実施の時間帯は不規則で、実験開始時間の調整が実質的に困難なことが多かった。さらにFACS解析は、大学内の専門技術職員に依頼するため、就業上の時間的制約があり、病理解剖のタイミングと調整することは予想以上に難しいことが多かった。 そこで平成24年度の途中から、病理解剖後にできるだけ短時間のうちにFACS解析が行うために、細胞分散の必要がない骨髄細胞をまず実験対象として絞り、生細胞の割合の解析とDNAの質の評価を行う実験を中心に実施した。 DNAの質の評価方法として、アガロースゲル電気泳動法は実施したが、当初計画していた次世代シーケンス用にサンプル調製後、Agilent DNA 7500キットを用いてDNAの質を比較評価する方法は,今回実施できなかった。そのかわり、DNAの断片化の有無を評価するためにより一般的で、前述の方法よりも比較的簡便に実施できるヒトβ-globin遺伝子に対するlong-range PCR法を今回は用いることにした。
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Strategy for Future Research Activity |
病理解剖の実施が不定期であることなどの理由から、ヒト死後臓器を用いた解析が当初計画したとおりには進んでいない。そこで死後臓器組織における核酸の劣化の程度に関する基礎データを収集するために、新たにマウスを用いた実験を計画している。具体的には、死後の経過時間ごとに解剖したマウスから各臓器組織を採取し、臓器組織ごとの生細胞の割合および核酸の質の解析を行う。核酸の質の評価に関しては、DNAおよびRNAについても解析を行う。 マウスの各臓器における核酸の劣化の程度を明らかにした後、代表的な臓器組織について細胞分散とFACSによる生細胞選別を行い、劣化の少ない高品質な核酸を抽出できるか否か検討する予定である。 同時にヒト死後臓器組織の試料収集、保存も蓄積し、マウス実験で収集した基礎データの妥当性を、ヒト死後臓器組織においても検証する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当しない。
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