2013 Fiscal Year Research-status Report
死後臓器組織からの高品質核酸抽出法の考案:病理解剖の分子生物学的探究基盤の確立
Project/Area Number |
24659159
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
高屋敷 典生 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (00364521)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野口 雅之 筑波大学, 医学医療系, 教授 (00198582)
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Keywords | 病理解剖 / 核酸 / FACS解析 |
Research Abstract |
ヒトの病理解剖検体はすべてのヒト臓器から十分量の組織が採取でき、大変有用な研究材料であるが、その臓器組織試料の核酸は、死後時間や保存条件により断片化がすすむため、分子生物学的な解析には限界があることが大きな課題である。本研究は、死後のヒト臓器組織から変性の進んでいない細胞のみを選別回収し、それらから高品質な核酸を抽出して、病理解剖材料を用いた質の高い分子生物学的探究の基盤を確立することが目的である。もし死後臓器から高品質な核酸を得ることができれば、病理解剖検体においてもSNPsやepigeneticsなどより詳細な遺伝学的な病態を詳細に解析できるようになる。 計画は、1,ヒトの各臓器において、死後時間に応じてどれだけ生細胞が残存しているか明らかにする。2,各臓器において、死後時間に応じたゲノムDNAの劣化の程度を明らかにする。3,各臓器組織から、変性の進んでいない細胞のみを選別、回収する方法を検討、開発する。 現在までの結果は、1,ヒトゲノムDNAの断片化について、マイナス80度凍結保存下であれば死後約16時間を超えた検体においても30kbpを超える長鎖のDNAが保存されている。2,β-globinに対するlong range PCRによる検討で、ほとんど全症例で8.5kbpまでの増幅産物が確認されたことから、死後経過時間の長短に関わらず臓器試料をマイナス80度凍結保存することは、高品質なDNAの保存に適していると考えられたこと。3,10症例の死後骨髄細胞に対しFACS解析を実施したところ、死後約11時間の症例においても生細胞が存在する。4,死後骨髄細胞のRNAの質の検討では、Ficollによる単核細胞分離の結果、無処理の骨髄よりもRNAの質を飛躍的に向上させることができる。これら、生細胞分離とRNAの質向上については、現在追加検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
原因としては、病理解剖数が例年よりも減少したため、試料収集が遅れていること。死後固形臓器の細胞分散について、条件設定が遅れていること。病理解剖自体はランダムに実施されるため、FACS解析などの技術の安定化、習熟に時間がかかっていることが関係している。
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Strategy for Future Research Activity |
死後臓器組織、とくに固形臓器の細胞分散とFACS解析を実施し、生細胞の分離を試みる。 さらに生細胞であることの確認のため、細胞培養を試みる。 死後臓器から質の高いRNAを抽出するために、FACSによる細胞選別を試みる。
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