2013 Fiscal Year Research-status Report
ダウン症モデルTs65Dnマウス中枢神経障害発症機序に関わる酸化修飾蛋白質の探索
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24659186
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
七里 元督 独立行政法人産業技術総合研究所, 健康工学研究部門, 主任研究員 (20434780)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中西 豊文 大阪医科大学, 医学部, 准教授 (10247843)
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Keywords | ダウン症 / 酸化修飾蛋白質 / 酸化ストレス |
Research Abstract |
25年度は24年度に採取した10週令マウス(ダウン症モデルマウスTs65DnマウスとコントロールB6EiC3マウス)の脳サンプルのイメージングマススペクトル解析および一般組織染色(HE染色)を大阪医科大学臨床検査学教室にて行った。結果として、Ts65Dnマウスの脳内でコントロールマウスの脳内と比較して発現が増加している数種類の高分子を見出すことができた。また、これらの高分子の脳組織内分布を特に本マウスで脂質酸化物が蓄積されていることを報告した海馬(歯状回)に着目して観察した。さらに、コントロールマウスにおいてミエリン塩基性蛋白の局在をイメージングマススペクトル解析装置で画像化し、HE染色との対比を行い、その局在分布を確認した。この手法を応用し、Ts65Dnマウスで有意に変動している分子の局在分布の解析を行う準備が整った。 さらに、上述実験で得られた高分子が抗酸化物質ビタミンEの投与によって変化をうけるのかを検討することを目的として、メスのTs65DnマウスにビタミンE投与(αトコフェロール0.1%含有食)を開始し、受精時から出生後も通してサンプリング時まで継続してビタミンEを慢性的に投与したマウスを作成し、経時的なサンプリングを行った。また、これらのマウスの行動評価を高架式十字迷路を用いて行った。高架式十字迷路試験でTs65Dnマウスではコントロールマウスに比較して開放脚に滞在する割合が増加していることを以前に報告しているが、今回の実験でも再現性を確認することができた。本マウスの中枢神経障害を反映するデータを取得できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度に実施を計画していたTs65Dnマウスおよびコントロールマウスの脳MRI画像の撮影および取得したMRI画像の3D構築化はすでに終了し、イメージングマススペクトル画像をマッピングする準備段階は完了することができている。平成25年度にはコントロールマウスにおいてミエリン塩基性蛋白の局在をイメージングマススペクトル解析装置で画像化し、HE染色との融合を開始した。これはまだコントロールマウスでの融合しか行っていないが、本手法を用いてTs65Dnマウス特異的に変動が認められる分子の局在を解析する手法確立に向けた準備が整ったと考えている。 25年度にTs65Dnマウスでコントロールマウスに比べて顕著に変動している分子をイメージングマススペクトル解析によって数種類確認することができた。しかし、今後どの分子に着目して解析を進めて行くかは現在まだ検討中の段階である。 また、ビタミンEを受精時から慢性的に投与したTs65Dnマウスからのサンプリングも終了しており、このサンプルもイメージングマススペクトルで解析を進めて行く準備を始めている。 さらに、25年度以降に実施を計画していた、酸化DJ-1特異抗体を用いたマウス赤血球の酸化DJ-1蛋白含有量の測定解析も終了し、本マウスにおいて本蛋白質の酸化が赤血球中で亢進していることも見出すことができている。 全体的にみて、現段階での研究はおおむね順調に進捗しているものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に取得したTs65Dnマウスおよびコントロールマウスの脳MRI-3D画像と平成25年度に取得したHE染色画像を融合し、さらにイメージングマススペクトル画像を重ねていく。この各画像を融合した画像をTs65Dnマウスとコントロールマウスで対比することで、有意に変動している分子を探索していく。特に、本マウスでは記憶学習に異常をきたすため、記憶学習の中枢で、脂質酸化物が蓄積している海馬(歯状回)に着目して同定を試みていく。具体的にはイメージングマススペクトル画像を取得した切片から海馬部分を切り抜きマススペクトル解析を行うことで探索・同定を進める。 また、探索範囲を狭めることを目的として、酸化還元に関与する分子に着目して探索同定を試みていく。研究代表者が報告した既報で、抗酸化物質であるビタミンEを受精時から継続的に投与することで本マウスの記憶学習障害が改善されることが確認されているため、酸化還元に関与する分子(グルタチオンペルオキシダーゼ、ペルオキシレドキシン等)に着目して解析を進め、その分布や量的な解析を進めて行く。 25年度に行ったTs65Dnマウス脳サンプルとコントロールマウスの脳サンプルで発現の差が認められた高分子蛋白質の同定を行う。 さらに、受精時から継続的にビタミンEを慢性的投与したマウスを作製しているが、経時的なサンプリングを行い、25年度に見出された高分子蛋白が変動しているかも解析する必要がある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度中にはTs65Dnマウスとコントロールマウスで有意に変動している分子の同定には至らず、特異抗体による組織染色を行うことができなかったため、特異抗体購入費として26年度に持ち越した。 本マウスの血中酸化ストレスマーカーの測定解析および酸化DJ-1の定量解析に必要な試薬の購入および、人件費に使用する。また、イメージングマススペクトル解析に必要な物品の購入費として使用する。
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