2012 Fiscal Year Research-status Report
媒介蚊体内でのマラリア原虫の分化・発育誘導に関与するハマダラカ特異的因子の同定
Project/Area Number |
24659188
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
新井 明治 香川大学, 医学部, 准教授 (30294432)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | マラリア |
Research Abstract |
ローデントマラリア原虫(Plasmodium berghei ANKA株)を用いるPlasmodium Mosquito Stage培養にハマダラカ抽出物を添加し、スポロゾイト形成促進効果について検討する実験を行った。ハマダラカ雌成虫のホモジネートと、サナギのホモジネートを調製したところ、いずれのホモジネートも淡い黒緑色の色調を示し、プロフェノール酸化酵素カスケード活性化による色素形成が示唆された。還元剤添加による色素形成阻害を避け、加熱によるタンパク変性処理で、それ以上の色素形成の進展を抑えることとした。各ホモジネートは加熱処理後に遠心により変性タンパクを沈殿させ、上清部分を濾過滅菌したものを抽出液として実験に用いた。ハマダラカ虫体抽出液を培養系に添加し、オオシスト形成および発育に対する影響を観察したところ、成虫抽出液添加群、サナギ抽出液添加群とも、非添加群に比して明らかな差が認められなかった。しかしながらオオシストからスポロゾイトが形成される時期では、サナギ抽出液添加群で若干のスポロゾイト形成促進効果が認められたが、成虫抽出液添加群では促進効果が認められなかった。これは本研究の作業仮説に反する結果であり、その要因について考察した。まず第一に、サナギは水中生活しているのに対して、成虫は羽化後は水中に浸ることはなく、両者の水分含有量が著しく異なることが活性物質の抽出効率の差として現れたと考えられる。次回は成虫虫体を抽出用緩衝液に一晩浸漬してから破砕処理を行うことで、サナギでの条件に近づける必要がある。次に、今回用いた抽出方法では、加熱処理によりタンパク成分の大部分を失った可能性を考慮する必要がある。細胞毒性を考慮して還元剤を使用しなかったが、次回は還元剤を添加してタンパク成分を十分含む抽出液を調製することで、有意なスポロゾイト形成促進効果の上昇を期待できると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1)スポロゾイト成熟マーカー遺伝子の同定 スポロゾイト成熟マーカー遺伝子の同定については、Plasmodium Mosquito Stage培養で十分量のスポロゾイト材料を得ることができず、本年度は達成できていない。マイクログラム単位の材料を得るためには、スポロゾイト形成を促進する因子を先に見出す必要があると考える。 2)ハマダラカ虫体抽出物のスポロゾイト感染性に及ぼす影響の評価 スポロゾイトの形成および成熟を促進する因子を同定すべく、ハマダラカ抽出物を培養系に添加する実験を行ったが、得られた抽出液の性状が十分なものではなく、当初の目的を達成するに至っていない。早急にハマダラカ抽出液調製プロトコルの最適化をはかる必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
1)ハマダラカ虫体抽出液調製のためのプロトコルを確立し、Plasmodium Mosquito Stage培養系におけるスポロゾイト形成率および機能的発育を促進するサンプルを得る。次いで、分画化したサンプルを用いて活性分画の性状を特定し、ハマダラカ因子を同定する。 2)ハマダラカ因子の添加によってスポロゾイト形成効率の改善が認められれば、培養由来スポロゾイトと蚊唾液腺由来スポロゾイトからサンプルを調製して、マイクロアレイ解析を行い、スポロゾイト成熟マーカー遺伝子を同定する。 3)ハマダラカ因子の物理・化学的性状からその作用機序を推定し、次いで同因子の阻害物質として機能し得る化合物をリストアップする。候補化合物のスポロゾイト形成阻害活性を、in vitroおよびin vivoの実験系で評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に使用しなかった5万円は、年度末に実施予定であった実験を25年度当初に延期せざるを得なくなったために生じた。この金額と平成25年度配分額を合わせて95万円を、培養実験に必要な物品(薬品、培地、血清、添加物、実験用動物、窒素ガス)マイクロアレイ解析実験用試薬、研究成果発表のための旅費、および論文掲載料として使用する。
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