2013 Fiscal Year Research-status Report
エイズ患者から同定した新しいヒトレトロウイルスの感染病理学的解析
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24659212
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
片野 晴隆 国立感染症研究所, 感染病理部, 室長 (70321867)
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Keywords | ウイルス |
Research Abstract |
前年度までにエイズ患者の剖検例から検出されたレトロウイルスについて、全長が8kp程度であること、ウイルスゲノムには、マカク属のサルのゲノムの一部とヒヒの内因性レトロウイルスの断片と相同性のある遺伝子配列が含まれていること、gag, pol, protease, envの遺伝子が含まれていること、系統樹解析では、サルレトロウイルスに近縁のベータレトロウイルス属に分類されることが示された。本年度はgag, pol, protease, envの各領域を検出するためのreal-time PCRを作成し、エイズ関連悪性リンパ腫、バーキットリンパ腫、メトトレキサート関連リンパ増殖性疾患など、免疫不全に伴い発症した悪性リンパ腫の検体を中心に、ヒトリンパ増殖性疾患の病理検体を検索した。同時にヒト他疾患の臓器などを陰性対象とした。約50検体のパラフィン切片からDNAを抽出し、real-time PCRを施行したが、いずれの遺伝子でも全例が陰性であった。このことから、本レトロウイルス遺伝子が検出されることはヒト検体においては極めてまれであることが分かった。また、GST融合タンパクシステムを用い、血清抗体を検出するための抗原タンパクを作成し、健常者血清を用いて、ELISAの系を確立した。今後、血清銀行の血清を用い、健常者における本ウイルスの血清疫学を明らかにするとともに、その病原性、感染性を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ウイルス核酸検出のためのreal-time PCR、および、血清抗体検出用のELISAなど、ウイルスを検出するためのツールが開発され、実際に検体におけるウイルス感染の調査に着手できた。ヒト検体については国立感染症研究所ヒトを対象とする医学研究倫理審査委員会の承認が得られ、検体の収集を行っている。各抗原に対するウサギポリクローナル抗体を評価中である。以上から、当初の研究計画に照らし、ほぼ、順調に研究計画が遂行されていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
倫理審査委員会の承認が得られたので、大規模なヒト臨床検体(血清、病理検体)の検索を行っている。免疫不全リンパ腫に限らず、リンパ腫のサンプルを広く、検索するとともに、血清疫学では健常者における既感染率を調査する。その結果から、感染経路の検索などにつながる結果が得られることが期待される。さらに、in vitroの感染実験系を作成し、ウイルスの自然環など、ウイルスの性状について解析する予定である。とりあえずは、本研究期間にウイルスの発見と、病理検体、血清疫学のデータをまとめ、公表を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度に行ったウイルス検出系の確立が予想より効率よく進み、また、平成25年度に解析可能であったヒト臨床検体の数が当初の予想より少なかったことから、残余が生じた。予定した数に足らない検体は次年度に行う予定であり、平成26年度は大規模なヒト臨床検体(血清、病理検体)の検索に多くの費用がかかることが予想される。さらに、ウイルス作成などの実験もこれからであり、平成26年度に多くの費用がかかることが予想されたため、これらの試薬購入費用を次年度に確保した。 血清、病理検体からのウイルス検出(real-time PCR用試薬、DNA, RNA抽出試薬等)、血清中の抗体検出に必要な試薬(ELISAプレート、抗体、発色剤)や、病理組織学的検索などに必要な試薬、ウイルス作製に必要な遺伝子導入試薬および細胞培養用品やプラスチック製品などの理化学器材、消耗品を購入する。さらに、学会における成果発表および情報収集のため、旅費を申請する。その他、研究成果発表費用として、論文投稿料、掲載料のほか、ウイルス遺伝子の解析ソフトのバージョンアップ代などが含まれる。
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[Journal Article] Classification of AIDS-related lymphoma cases between 1987 and 2012 in Japan based on the WHO classification of lymphomas, fourth edition.2014
Author(s)
Ota Y, Hishima T, Mochizuki M, Kodama Y, Moritani S, Oyaizu N, Mine S, Ajisawa A, Tanuma J, Uehira T, Hagiwara S, Yajima K, Koizumi Y, Shirasaka T, Kojima Y, Nagai H, Yokomaku Y, Shiozawa Y, Koibuchi T, Iwamoto A, Oka S, Hasegawa H, Okada S, Katano H
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Journal Title
Cancer Med
Volume: 3
Pages: 143-153
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant