2012 Fiscal Year Research-status Report
医療資源の効率性と医療圏の創造的な破壊による圏域設定に関する研究
Project/Area Number |
24659243
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
山口 徳蔵 札幌医科大学, 附属総合情報センター, 研究員 (80423771)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新見 隆彦 札幌医科大学, 医学部, 助手 (10404584)
大西 浩文 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (20359996)
高塚 伸太朗 札幌医科大学, 附属総合情報センター, 助教 (30457733)
辰巳 治之 札幌医科大学, 医学部, 教授 (90171719)
森 満 札幌医科大学, 医学部, 教授 (50175634)
當瀬 規嗣 札幌医科大学, 医学部, 教授 (80192657)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 医療機会の公平性 / 医療圏 / 医療システム / 医療・保健・福祉 / 医療社会学 / 医療経済学 / 医療情報 / 医療の効率性 |
Research Abstract |
急速な人口の高齢化と人口減少の波動は、疾病構造に変化をもたらし、医療資源の効率的な配分をゆがめる。『均霑な医療サービスの提供体制の構築に向けた受療(診)者の選好性に着目した新たな仕組み』がもとめられる。 本研究では、医療機関の診療報酬請求書(レセプト情報)に凝縮されている個人の医療情報の内容を解き解すため特定機能病院の実データを用いたこれまでの研究を礎として、北海道の二次医療圏のうち、地域的な特性を有する市町村の国民健康保険の被保険者並びに後期高齢者医療制度の被保険者のレセプト情報のデータを収集・分析することを主眼として、社会資本整備水準に係るデータを統合化し、地域社会が変容する過程で、地域の医療提供システムが破壊されつつ新たに創出される胎動要因を明らかにし、創造過程に係るしくみの開発、研究を開始した。 分析対象地域は、二次医療圏と三次医療圏が同一の市町村から2市町を、先行研究において二次医療圏(垣根)越え受療(診)者が多いとされている二次医療圏から2町を、更に人口20万人規模の1市と大都市に隣接する1市計6市町を選定し平成23年4月分から1年の国保の診療分約174万人分と後期高齢者の約136万人分計約310万人分のデータ解析の準備を整えた。 市町村においては、医療機関のレセプトによって被保険者が国民健康保険から後期高齢者医療制度に移行しても医療情報を統合した分析が可能である。同一市町村内で住民登録を有する場合、当該、長期間にわたり疾病履歴と投入された医療費の全容を明らかにできる筋道を得た。被保険者の選好性については、医療機関へのアクセスの難易、人口の高齢化率、社会資本整備率等の外部データと診療情報との連携による動向分析を基礎として、また、疾病別による入・外患者の動向の季節性、入院後の死亡率と医療費との関連性などについて解析予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、医療法に基づく医療計画の見直しの時期と重なり、地域医療サービスの課題も浮き彫りとなる関連指標も明示された。これらの資料をも参照しつつ、医療サービスの需給面の実態を、医科・歯科別、疾病別(複数の疾病を中分類別とICD-10別)、調剤情報、合併症の有無・医療機関の遠近情報を加えたデータの処理システムの開発を進めた。合併症等複数の疾病で受療(診)するケースや入・外別、DPC適用医療機関別等医療費と疾病内容の導出可能なシステムの開発とその活用の準備を整えた。 医療機関、審査機関及び保険機関が共有するレセプト情報は基本的には一致することを前提として、個人情報・医療機関の事業活動の内容は、暗号化処理を行い、統計解析に活用可能な状態を維持した。しかし、3者の機関の間においては、レセプトの複雑な構造とその特質や機関が異なるため、制度上の制約等から生じる約1%のデータを、統一的な解析を図るため、74歳までの国保の被保険者から75歳への連携のためのデータの制約条件等を把握の上、その対策を検討整理した。 これらの作業において、医療資源の偏在とともに、医療資源の消費の実態には、地域間・年代間の偏りの強弱、特定の年代に医療費消費の偏りが顕著である市町村、更に、疾病による季節変動の有無や、社会資本整備水準の程度、情報通信技術(ICT)活用環境の良否が、医療圏の垣根越え要因の側面であることが部分的に明らかになった。 しかし、社会資本の整備、人的資源の効率的な配分には、時間を要し、困難を伴いつつ既存の枠組みを破壊する作用をもたらす。このため、地域住民の医療サービスへの不安軽減と安心感を高められる対策の方向性を得るため、先行的に五疾病に焦点を当てた情報の収集整理、解析のための条件整備を整え、次年度以降の本格的な調査分析に備えた。
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Strategy for Future Research Activity |
収集・整理したレセプト情報の特徴を活かして、医療資源賦存状況から医療サービスの需給面に作用する要因を明らかにする。更に人口の高齢化率の予想値など、外部データを取り込んだレセプトデータベースの分析システムの構築とその充実を図り、診療情報、被保険者及び保険者、医療機関情報等と各種社会資本指標を活用して分析を進める。このアプローチに加え、今後は、医療サービスの需要面に作用する要因を、受療(診)者の流動的な選好性に着目して、医療資源の充実度、医療機関へのアクセスの難易、医療システムがもたらす要因の強弱・影響度と地域的範囲の明確化を図る。 このため、地域的範囲(対象市町村数)や分析対象年度を広め、データの入手範囲と内容の充実を図る。他方、当面の市町村の要望にも配慮して、癌・脳卒中・心筋梗塞・糖尿病・精神疾患等の疾病の診療情報の分析や、地域・地区別比較など市町村単位の比較検討に配意した分析を併行する。その際、いつでも、どこでも、誰でも先進的な医療技術の成果を享受できる医療システムの下での需給面に作用する内容として把握する。 地域の人口構造、産業・経済構造の急速な変化は、医療サービスの需給体制に変革をもたらす。急性期医療・亜急性期医療・慢性期医療に加え、病態に応じた医療の質に対する住民(被保険者)の欲求は一層多様化する。 結果として、医療計画の医療圏設定による医療サービス供給体制は、住民(被保険者)の望みとのミスマッチが生じ、新たな仕組みへの胎動となる。 この状態への駆動力の明確化のため、私的経済行為として医療サービスの選択結果の内容が表記されているレセプト情報を基礎として得られるデータについて、地域の特性の異なる複数の市町村から抽出し、これらの比較分析を通じて、効率的な医療サービス体制の設計と新医療システムマネージメントのための条件を整理し明確化を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
過年度において、複数の市町村から、匿名化処理後のレセプト情報の提供を受けるに当たり、開示に係る条例上の手続きや、国民健康保険と後期高齢者制度の保険者が異なることからデータ入手までの手続きに時間を要し、また、データベースの分析システムの開発と仕様検討に係る時間を必要としたことから、研究費の一部の支出は次年度に繰り越すこととなった。 平成25年度は、収集整理されたレセプト情報を中心に、本格的なデータ解析に取り組み、事業計画に沿った適切な推進と研究費用を執行する。 具体的には、年度当初において、システムプログラムの設計の本格化とともに、夏頃からプロトタイプのものを使用したデータの集計解析の試験運用を行うこととする。他方、市町村からの24年度分(24年4月から25年3月分)のレセプト情報の提供に係る支援・協力を得る段階では、医療サービスの提供体制の効率化・重点化、機能強化策や医療・保健・福祉の連携について意見交換の内容を深化させる。更に、保険者との緊密な連携を図り、データの確認、活用方法の試行の反復を経ながら、データの特徴を活かした、分析の効率化のため、システムプログラムの必要な改良・改善を図り、中間段階において国立保健医療科学院との意見交換を行う予定である。また、医療・病院管理学会や公衆衛生学会に出席し、情報収集と共に、本研究事業の中間時点における内容の自己評価に基づき、その後の研究の充実強化に資するよう取り進める。 これらに要する費用は、レセプトデータベースの分析システムの開発と統計解析ソフト代に約60万円、市町村との連携及び情報収集費用に約40万円、学会出席費用に約60万、プレゼンツールやパソコン周辺機器などの費用に約9万円余(計約169万円余)を使用する計画である。
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