2012 Fiscal Year Research-status Report
複数領域の融合による、相互の納得を目的とした説明同意過程の標準化に関する研究
Project/Area Number |
24659250
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
織田 順 東京医科大学, 医学部, 准教授 (60459500)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
織田 香里(鈴木香里) 東京医科大学, 医学部, 助教 (10366130)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 医療の質 / インフォームド・コンセント / 合意形成 / 診療方針決定 / 患者の権利 |
Research Abstract |
研究計画に沿って初年度の研究を行った。 (1)診療報酬点数表のJ・Kコードに相当する処置/手術のうち、特に専門診療科の壁を越えて日常よく遭遇する、一般処置・救急処置・小外科手術を中心とした約100項目を、現状で書面による説明と同意を得る手順を経ている・経ていないにかかわらず、対象として選択/選別した。(2)加えて、造影剤のような薬剤使用リスクのあるものや、輸血実施に伴う同意と書類、DNAR(Do Not Attempt Resuscitation)など重大な治療方針決定に関わる同意形成についても抽出した。(3)以上について、現在のインフォームド・コンセント(IC)の状況を把握すべく調査を行い、自施設/多施設のIC書式の収集を行った。 これに加えて、 (4)コーパス(言語研究データベース)の考え方により、Nグラム(全文解析による単語ごとの出現頻度分析)を使用して、書類に使用されている全単語の抽出を開始した。解析に必要なソフトウェアのコア技術は本研究チームにより既に開発されている。非医療者が理解するために困難が予想される単語を抽出し、医療者とのギャップを明らかにする試みを開始した。(5)IC書類に対する理解度を自施設診療録より抽出する作業を開始した。(6)理解を得るまでを時系列的に整理し、その特色を解析している。 今後、医療行為の必要性・危険性、実施した場合のメリット・デメリット、実施しない場合の代替方法とデメリット、セカンドオピニオンを保証すること、実施前であれば同意を取り消すことができること、といった、従来より求められてきた要件は少なくとも満たすように構成するべく、各事例について再構成を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・他施設についての解析は来年度以降にも必要であるものの、特に自施設のIC状況と、本人家族に対する説明理解度の把握は順調に進んでおり、診療録記録形式も、データベース化を意識したものにできている。以上よりおおむね順調に進展していると言える。 ・学会等での発表は予定していた回数を超えて行えている。
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Strategy for Future Research Activity |
・各専門領域から考案したICプロセス、IC文書を解析し、融合をはかり暫定的にプロダクトを完成させることが主な目標となる。 ・応募者らの以前の研究(領域別診療フレーム解析を用いた救急医療における医療安全と質保証に関する研究、基盤研究(B))により、専門科(分野)により思考のフレーム構造が異なることが明らかになった。例えば外科的フレームでは術前後と合併症対策にリソースを投入し、救急的フレームでは気道、呼吸、循環などのバイタルサイン安定化が軸となっている。このようなフレームの偏りはICプロセスに大きな影響を与えていると考えられるため、分担研究者との間で相互点検し確認する。この過程でICプロセス・文書への専門領域別の特色(癖・傾向)を明らかにする。 ・法的に必要な事項が網羅されているかどうかについて、法学の観点から専門家による分析を行う。ここで、医療者の作成する文書の法的な弱点や、患者側立場に立った際に不適切と考えられ得る事例が蓄積されることが期待される。これを留意すべき事例集として一般化する。 ・コミュニケーションの観点からは、連携研究者として会話分析の専門家の協力を得て、会話のかかり受けを主とした解析から開始する。医療に関する会話については、例えば、悪いニュースを伝える際の解析、といった研究が進んでいる。しかし納得を得るように伝える、同意を得る、という日常的に繰り返されるやりとりは意外に分析の対象とされてこなかった。静的な解析としては、医療の情報を伝える際に使用される言葉のうち難解な用語を抽出し、これを解説する、といった研究が先行してきたが、本研究では動的なやりとりを対象とした上で、医療者と患者側のギャップを捉えて類型化することを目指す。また、上記の医学・法学の観点から構成した文章の表現について解析と改善点の提案を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究計画に沿った使用計画となる。データ入力補助、資料収集に加え、年度後半ではさらに成果発表を行うためその費用として計画している。
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Research Products
(20 results)