2012 Fiscal Year Research-status Report
神経ステロイドによるアルツハイマー病の新規治療法の開発
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24659259
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
曽我部 正博 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10093428)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | アルツハイマー病 / アミロイドβ / 海馬 / 長期増強 / アセチルコリン受容体 |
Research Abstract |
アルツハイマー病(AD)の主要な原因は過剰産生されたアミロイドβ(Aβ)の凝集沈着による神経細胞の傷害/死が原因とされているが(アミロイド仮説)、有効な治療法は確立されていない。我々は、合成Aβの脳内注入(14日間)法で作成した急性ADモデルラットを用い、Aβが海馬シナプスのα7ニコチン性アセチルコリン受容体(α7nAchR)の機能を障害して学習機能不全を起こし、それは同時投与した硫酸プログネノロン(PREGS)によって防止できることを発見した。しかし、PREGSが慢性化したADにも有効かどうかは不明である。本研究は、遺伝的に高濃度のAβを産生し、慢性AD症状を示す老齢モデル動物を用いて、PREGSがその症状改善に有効かどうかを、学習行動、電気生理学、組織学で検証し、新たなAD治療法の開発を目指している。具体的には8ヶ月齢のAPP/PS1マウスを用いてPREGSがAD症状を改善するか否かを、学習行動と脳スライスを用いた電気生理学/組織学で検証する。平成24年度は、モリス水迷路を用いた学習行動実験と、海馬スライス標本を用いた海馬歯状回シナプスの高頻度刺激誘導性の長期増強(HFS-LTP)を指標にしてPREGSによる改善効果を解析した。その結果、20mg/kgのPREGSを30日間連続投与することで、不全であった空間学習機能とLTPが著しく改善することが確認された。すなわちある程度進行したAD症状を、治療できる可能性が示された。今後はその細胞分子機構を、電気生理学、薬理学、組織学を動員して明らかにしていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ順調であるが、PREGSによる改善効果の細胞分子機構を解明するにはさらなる電気生理学的/薬理学的/組織学的な解析が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
ADモデル動物のLTP不全とPREGSによる改善効果のさらなる解析を進めると共に、当初の予定通り、組織学的な研究を開始する。 近年、海馬の学習機能に海馬歯状回におけるニューロン新生が必須であることが判明した。そこでH25年度は、(1)この新生ニューロンの、産生・発達・シナプス形成、成熟、生存に対するPREGSの効果を、BrdU染色と発達段階に固有な分子マーカーの染色を組み合わせて組織学的に解析する。また、(2)発達各段階のコントロールおよびPREGS投与マウスの海馬スライス標本を作成して薬理学・生化学的解析を行い、各発達段階におけるPREGS効果の分子機構を解析する。詳細は以下の通りである。 (1)常法に従ってBrdU(50mg/kg)を12日間連続投与し、投与終了後1日目に細胞増殖マーカー(Ki67)で2重染色することにより、新生ニューロンの産生数、投与後14日目に微小管関連蛋白質マーカー(DCX)との2重染色により発達途上細胞の突起形成、投与後28日目にニューロン成熟核マーカー(NeuN)およびグリア成熟マーカー(GFAP)との3重染色で最終残存細胞の観察と解析を行う。PREGSの投与は、BrdU投与開始7日前から始めてBrdU投与後14日目までの合計34日間にわたって行い、新生ニューロンの産生から成熟過程をほぼカバーする。その結果を基にして、PREGSが成熟過程のどの段階に最も効いているのかを明らかにして、そのメカニズムを推定する。 (2)我々はすでに、健常マウスを用いて、PREGSが新生シナプス前終末のα7nAchRの感作とその成熟細胞のシグマ1(σ1)受容体の同時活性化、さらにはその下流で[PI3K-Akt-mTOR]シグナル系を賦活して新生ニューロンの生存率を高めることを示してきた。この仕組みがAPP/PS1マウスに対するPREGS効果においても重要か否かを調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費は、主として実験動物・薬品代(物品費)、研究打ち合わせ旅費 に使用する。
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Research Products
(5 results)