2012 Fiscal Year Research-status Report
抗炎症作用を持つタンパク質を利用した新たな抗炎症剤のIn vivoでの検証
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24659263
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
岡本 一起 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 准教授 (40177085)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 抗炎症剤 / NF-κB / ステロイド薬 / 核内レセプター / 転写共役因子 |
Research Abstract |
ステロイド薬はグルココルチコイド受容体(GR)に結合し、GRが炎症性転写因子NF-κBを直接阻害することにより、その抗炎症作用を発揮する。申請者は核内受容体コアクティベーター(MTI-II)がステロイド薬と同じ作用機序で強力な抗炎症作用を有していることを見出した。そこで、MTI-IIを抗炎症剤として開発するために細胞内導入配列と融合させたMTI-II抗炎症剤を作製した。本研究の目的は、ステロイド薬の適応疾患でのMTI-II抗炎症剤の有効性を検証し、その有効性(ステロイド薬と同程度に強力な抗炎症作用とより少ない副作用)を確認することにより、ステロイド薬より使いやすく、ステロイド薬に代わる新たな抗炎症剤を開発することである。 当初は細胞内導入配列をN末端とC末端に付加した2種類のMTI-II抗炎症剤(H11RMとHM11R)で検証する予定であったが、現状の分子生物学的方法(大腸菌、酵母菌、昆虫細胞および無細胞系での発現)ではタンパク質の発現量が少なく、研究開発が十分に進められないことがわかった。そこで、当該年度は化学合成できる長さのMTI-II抗炎症剤の開発を試みた。 まず、MTI-IIの抗炎症作用を発揮する部位の同定をおこなった。MTI-IIのN端側と中央部およびC端側をそれぞれ発現するベクターを作製して、NF-κBの転写活性に及ぼす影響を解析した。その結果、中央部の酸性アミノ酸領域(AR; acidic resion)が抗炎症作用を持っていることがわかった。次にこのARにタンパク質導入配列(アルギニン8連打;8R)を付加したペプチド(AR8R)を発現するベクターを作製して、細胞内で発現させた。その結果、AR8RはMTI-IIと同程度強力にNF-κBの転写活性を抑制することが確認できた。これによりMTI-II抗炎症剤を化学合成できるようになり、実用化のための研究開発を促進させることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的であるステロイド薬の適応疾患(特にアレルギー性免疫疾患である花粉症や自己免疫疾患である関節リウマチ)でのMTI-II抗炎症剤の有効性の検証を達成するためには、MTI-II抗炎症剤を多量に発現させて、かつ高純度に精製する必要がある。しかし、現状の方法(大腸菌、酵母菌、昆虫細胞および無細胞系での発現)ではMTI-II抗炎症剤(H11RMとHM11R)の発現量が少なく、研究開発が十分に進められなかった。また、MTI-II抗炎症剤はアミノ酸112残基からなるタンパク質なので、このままでは長過ぎて化学合成はできない。50残基以内の長さにまでMTI-II抗炎症剤を短くすることができれば、MTI-II抗炎症剤を化学合成できるので、これまで困難であった多量発現と高純度精製をおこなう必要がない。そこで、まず化学合成できる長さのMTI-II抗炎症剤の開発を試みた。MTI-IIの抗炎症作用の作用部位を解析した結果、中央部の酸性アミノ酸領域(AR; acidic resion)が抗炎症作用を持っていることが明らかになった。次にこのARにタンパク質導入配列(アルギニン8連打;8R)を付加したペプチド(AR8R)を細胞内で発現させ、MTI-IIと同程度強力にNF-κBの転写活性を抑制することが確認できた。すなわち、化学合成可能な長さのMTI-II(AR8R)は細胞内で抗炎症作用を発揮できることがわかった。これによりMTI-II抗炎症剤を化学合成できるようになり、これまで困難であった多量発現と高純度精製の問題点が解決した。 本年度は、MTI-II抗炎症剤(H11RMとHM11R)の発現量の問題により当初予定していた動物実験にまでは到達できなかった。しかし、MTI-II抗炎症剤を化学合成できるようになり多量発現と高純度精製のステップが省けるので、今後は迅速に研究開発をおこなうことができる。
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Strategy for Future Research Activity |
MTI-II抗炎症剤を化学合成できるようになり、これまで困難であった多量発現と高純度精製の問題点が解決した。今後の研究の推進方策は、化学合成したMTI-II抗炎症剤(AR8R)をステロイド薬の適応疾患のモデル動物に投与して、ステロイド薬に匹敵する抗炎症作用を示すことと血糖値の上昇を目安に副作用が少ないことを確認し、MTI-II抗炎症剤の有効性を検証する。具体的には、まず、抗炎症剤のスクリーニングに用いられるカラゲニン足浮腫モデルでの実験を基にして、AR8Rの投与量を算定する。次にステロイド薬の適応疾患のモデル動物(アレルギー性免疫疾患である花粉症や自己免疫疾患である関節リウマチ)に投与して、AR8Rの抗炎症効果を炎症所見、生化学的検査、病理組織学的検査により評価する。同時にAR8Rのホルモン作用(副作用)を血糖値と血中ACTH濃度の推移により評価する。ポジティブコントロールとして合成ステロイド薬(デキサメサゾン)の抗炎症効果とホルモン作用を測定し比較する。投与方法は、まず全身投与(腹腔内注射)にて抗炎症効果を確認してから、局所投与(関節腔内注射など)での抗炎症効果も確認する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、MTI-II抗炎症剤(H11RMとHM11R)の発現量が極めて少ないという問題により当初予定していた動物実験にまでは到達できなかった。その結果、動物実験に充てる予算が余り次年度に使用する研究費が生じた。しかし、MTI-II抗炎症剤を化学合成できるようになり、これまで困難であった多量発現と高純度精製の問題点が解決したので、今後は迅速に研究開発をおこなうことができる。次年度の研究費の使用計画は、化学合成したMTI-II抗炎症剤(AR8R)を用いて、当初の予定どおりステロイド薬の適応疾患モデル動物でのMTI-II抗炎症剤の有効性(ステロイド薬と同程度に強力な抗炎症作用とより少ない副作用)を確認する実験を実施する。
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Research Products
(6 results)