2013 Fiscal Year Research-status Report
抗炎症作用を持つタンパク質を利用した新たな抗炎症剤のIn vivoでの検証
Project/Area Number |
24659263
|
Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
岡本 一起 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 准教授 (40177085)
|
Keywords | 抗炎症剤 / NF-κB / ステロイド薬 / 核内レセプター / 転写共役因子 |
Research Abstract |
新しいタイプの核内受容体コアクティベーター(MTI-II)は、ステロイド薬と同じ作用機序で強力な抗炎症作用を示すが、ホルモン作用(ステロイドの副作用)は認められない。MTI-IIを利用すればステロイド薬と同じ作用機序を持つので、ステロイド薬と同程度に強力でより副作用の少ない抗炎症剤が開発できる。実際に、細胞内導入配列と融合させたMTI-II抗炎症剤が炎症モデル動物で強力な抗炎症作用を示すが、血糖値を上昇させないことを確認した。本研究の目的は、ステロイド薬の適応疾患でのMTI-II抗炎症剤の有効性を検証することにより、ステロイド薬より使いやすく、ステロイド薬に代わる新たな抗炎症剤を開発することである。当初は細胞内導入配列をN末端とC末端に付加した2種類のMTI-II抗炎症剤(H11RMとHM11R)で検証する予定であったが、現状ではタンパク質の発現量が少なく、研究開発が十分に進められないことがわかった。そこで、化学合成できる長さのMTI-II抗炎症剤の開発を試みた。その結果、中央部の酸性アミノ酸領域(AR; acidic resion)にタンパク質導入配列(アルギニン8連打;R8)を付加したペプチド(ARR8)が、in vitroで全長のMTI-IIと同程度強力にNF-κBの転写活性を抑制することが確認できた。ARR8は全長で48アミノ酸残基なので、化学合成可能な長さである。これにより当初の予定通りにステロイド薬の適応疾患でのMTI-II抗炎症剤(ARR8)の有効性を検証した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MTI-II抗炎症剤を化学合成できるようになり、これまで困難であった多量発現と高純度精製の問題点が解決した。化学合成MTI-II抗炎症剤(ARR8)の抗炎症効果をステロイド薬の適応疾患(アトピー性皮膚炎)で検証した結果、ARR8がアトピー性皮膚炎に対して有効であること、塗布投与が可能であること、ステロイド薬がもつ副作用(コルチコステロンの低下と白血球数の減少)を持たないことが確認できた。特にARR8の塗布投与の可能性が示せたことは、(1)常温で軟膏基剤と混合してもペプチドARR8は変性沈殿しないこと、さらに(2)ARR8の二次構造の維持が(少なくとも細胞内に入るまでは)薬効の発揮に必要でないことを示している。これらのことは、ペプチド製剤であるARR8を薬剤として開発する上で非常に重要な発見で、今後の研究開発を大きく発展させるものである。
|
Strategy for Future Research Activity |
化学合成できる長さのMTI抗炎症剤(ARR8)が塗布投与でアトピー性皮膚炎に対して有効であり、ステロイド薬がもつ副作用(コルチコステロンの低下と白血球数の減少)を持たないことが確認できた。そこで、今後の方針として以下の3つの研究を推進する。 (1)ARR8の抗炎症作用を他のステロイド薬の適応疾患(リウマチ、花粉症など)で検証する。 (2)ARR8を内服薬として開発する目的で、D-アミノ酸を用いてD-アミノ酸ARR8ペプチドを合成し、その抗炎症作用を検証する。D-アミノ酸ペプチドは消化酵素に対して抵抗性を持つので、内服薬として使用できる可能性が高い。 (3)ARR8とNF-κBタンパク質の結合ポイント(抗炎症作用ポイント)を探索する。結合ポイントがわかれば、そこに結合する薬(ARR8をミミックする薬)を開発することが可能となる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度に、抗炎症タンパク質MTI-IIの作用部位より成る合成ペプチド(ARR8)の抗炎症作用をIn vivoで検証する予定であったが、外注したARR8の合成に時間が掛かり、動物実験を年度内で終了させることが困難となった。このため、動物実験を次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることとした。 化学合成MTI-II抗炎症剤(ARR8)の抗炎症効果をステロイド薬の適応疾患(アトピー性皮膚炎)で検証した。具体的には、化学合成したARR8をダニ抗原誘発アトピー性皮膚炎モデル(NCマウス)に塗布投与し、軟膏対照群(ネガティブコントロール)、リンデロン投与群(ポジティブコントロール)と共にマウスの右耳介部皮膚症状スコアおよび右耳介部厚を測定した。さらにARR8の副作用を検証する目的でコルチコステロン濃度、血糖値、白血球数を測定した。
|
Research Products
(4 results)