2012 Fiscal Year Research-status Report
検査診断の新規バイオマーカーの開発を目指した血液中の低分子RNAの探索
Project/Area Number |
24659269
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
高橋 由明 新潟大学, 医歯学系, 教授 (60115045)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梨本 正之 新潟薬科大学, 応用生物科学部, 教授 (30228069)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | バイオマーカー / ncRNA / miRNA / 検査診断 / 発現調節 |
Research Abstract |
男女それぞれ2人ずつの血漿からトータルRNAを抽出し、サイズマーカーを基にしてアクリルアミドゲル電気泳動で、5-35塩基長の低分子非コードRNA(ncRNA)の単離を試みた。単離したRNAは放射性リンで5’末端標識を行い、電気泳動法により目的とした鎖長のRNAが精製できたことを確認した。調製したncRNAに対しcDNAを作製、PCR増幅後にクローン化を行った。クローン化DNAの塩基配列の解析から、これまでに19個(12種類)のncRNAが同定できた。これらのncRNAは、11塩基長のものが1個、12塩基長が2,13塩基長が10、15塩基長が2、17塩基長が2(同一塩基配列)、34塩基長が1であった。13塩基長の10個のncRNAの中で7個が同一配列であったので、血液中で存在量の高いncRNAであると推定された。なお、15,17と34塩基長のRNAは同一個人から単離されたものである。コンピュータ解析から、34塩基長のRNAは海洋微生物(Maricaulis maris)のMet-tRNAの中央部分の塩基配列と完全に一致した。この解析結果は、このRNAがジーンサイレンシング法の1つであるTrue Gene SilencingのガイドRNAになりうるものであり、生体内で重要な機能を持つことが示唆された。従って、このRNAが遺伝子治療のためのkey分子として利用される可能性が期待できる。また、このRNAについて、配列の全長に対するセンスとアンチセンスのプローブでそれぞれノーザンブロットを試みたが存在を示す確認は現時点でできなかった。恐らく血液中の存在量の問題と考えられるが現在検討中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要の欄で記述したよう、申請時における平成24年度研究実施計画は4項目(I.血中ncRNAの単離・精製、 II.単離したncRNAのcDNA作製とPCR増幅、 III.cDNAのクローン化と解析、 IV.モデル疾患のncRNAの発現解析)からなる。このうちI~IIIの項目については計画通りに進行できた。ただし、クローンの解析数については、計画には示さなかったが数百クローンの解析を意識していたので、19個のクローンの解析では希望予想数をはるかに下回っていた。しかしながら、今回、ncRNAのクローン化については方法論的に確立できたので、平成25年度には満足できるクローン数の解析を達成できると確信している。以上より、平成24年度実施計画の項目I~IIIに関しては計画した90%程度は達成できたと評価して良いと考えられる。一方、項目のIVに関しては全く実行することができなかったので評価としては0%である。1年間の研究を通して、項目IVは計画的に無理があり、今回の申請で遂行することは難しいと考えられ平成25年度の計画の変更を行いたい。これらを総合した平成24年度の研究目的の達成度は60-70%と評価できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究実績から平成25年度は当初計画していたコンピュータ解析によるncRNAの特性を明らかにし、それらが標的とする分子を予測していく。そのためには血液中のncRNAの塩基配列情報を可能な限り大量に蓄積し、それらを大規模かつ網羅的にコンピュータ解析していく必要がある。前年度の研究実績から、クローン化に必須である純度の高い低分子RNAの調製法は確立できたので、前年度と同様に継続してクローン化を行い、RNA塩基配列情報を蓄積していく。この方法と同時進行の形で、タカラバイオ、理化学研究所オミックス基盤研究領域、BGI Japanなどに委託解析を依頼することも方法として新たに採用していく。得られたRNA塩基配列情報について、コンピュータ解析によりそれらの特性及び標的分子について予測を行う。ついで、予測できた情報が実際に発現調節の制御に関わっているか培養細胞系を用いて検証していく。発現調節に関係するncRNA候補を同定できたならば、それらについて、定量RC法もしくはハイブリダイゼーション法によるncRNAの定量化を検討する。疾患とncRNAの関連については1年という時間的制約があるため、当初計画していた特定疾患患者からのncRNAの探索を新たに始めるのではなく、同定できた発現調節に関係するncRNA候補について、コンピュータ検索と文献検索等によりそれらの発現異常が関係すると考えられる疾患を予測していく。最終的には予想される疾患の患者について、対象となっているncRNAの血中濃度を調べマーカーとなり得るか判断する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
【現在までの達成度】で記載したよう、平成24年度の実施計画の4つの実施計画のうち1つの計画について実施できず変更を行うことにした。この変更により、平成24年度に計上していた物品費の一部が未使用となった。 この未使用分については、【今後の研究の推進方策】で述べたよう、RNAの委託解析費用として平成25年度に使用する計画である。なお、RNAの解析費用は1ランあたり30-40万円の費用がかかるため、次年度使用額(B-A)で支払いは可能である。
|