2012 Fiscal Year Research-status Report
尿中メガリンは腎組織血流障害における急性腎臓病(AKD)のマーカーとなり得るか
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24659270
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
高橋 昌 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (30303150)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | メガリン / AKD / 急性腎障害 / 人工心肺 / 心臓血管外科 |
Research Abstract |
周術期における尿中メガリン動態の評価:プロトコールを策定し、全身麻酔手術症例の340例より術前・周術期に定時的に尿中メガリン(Aメガリン、Cメガリン)及び関連因子として、従来より腎機能の指標とされているバイオマーカー(N-Gal、β2ミクログロブリン、クレアチニン、α1ミクログロブリン、NAG、アルブミンほか)を検体として採取し、凍結保存。微量定量分析を行った。同時に症例の腎機能に影響を及ぼすと考えられる項目・データを詳細に採取した。人工心肺症例においては、心機能データ、体外循環に関する様々なデータを採取した。これらは本学・附属病院の倫理委員会の審査・認定を受け、同意書を取得して行った。症例には体外循環症例、新生児症例が多く含まれ、それぞれのバイオマーカーの挙動について定期的に解析結果を集計しながら問題点抽出した。成人の開心術症例において、メガリンの挙動に一定の傾向を見出し、急性腎障害(AKD)発症との有意な相関を見出した。この結果はメガリンが開心術後AKD発症の予測因子として有効なバイオマーカーとなりえる可能性を示すものと考え、更に詳細なデータの蓄積を行っている。一方で、メガリンの測定系において測定時の検体PHが微量な質量分析の際にバイアスとなることが明らかになった。現在、全検体を対象として測定条件のPHの変更を行い解析中であり、更に信頼性の高いデータが得られ、項目間の相関がより明確に示されることを期待している。また、解析途中で見出された傾向の一部は、ラットによる動物実験系で再現性を検討し、より強固な裏付け作業を急いでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究実施計画に示した各種メガリンと関連バイオマーカーを術前、周術期に定期的に採取し、凍結保存、微量質量解析を行う計画は順調に実施され、予測を上回る症例集の蓄積が可能であった。また、計画にある「得られたデータの信頼性を検証する」過程で一部検体のデータのばらつきが問題となった。詳細な解析手順を検証した結果、測定検体のPHが結果に影響を与えていることが明らかになった。この結果、測定条件を揃えて再解析を要する検体数が大幅に増加し作業の遅れが懸念されたが、年度末の時点で平成24年度の予定はほぼ達成され、また平成25年度予定であった新生児症例の蓄積も平成24年度内に一定症例数を対象とできたことで、全体としておおむね順調な達成であると考えている。多くの新しい知見が得られているが、メガリンの測定系には一部申請中の特許事案があることから、学会発表及び雑誌への投稿を平成24年度は差し控えている。
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Strategy for Future Research Activity |
年度当初は、測定系の測定精度の改善を図ることから開始する。測定PHの至適条件を決定し、前データの再検討を行い、現在得られている知見の信頼性を高める。また当初計画に則り平成25年度は虚血再還流モデルとなる症例のデータ蓄積を行い、AKD発症と関連する臨床データと、メガリンを始めとする関連バイオマーカーを計測し、虚血再還流により発症するAKDとメガリンの挙動について明らかにし、虚血再還流によって生じるAKDをメガリンが予測できるか、あるいは何らかの因子としてバイオメーカーの役割を果たすのかを明らかにする。これら得られた結果は、現在の特許申請の状況を鑑みて、順次学会発表及び論文として報告する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、現在のプロトコール症例数のさらなる集積と解析、及び25年度計画にあるプロトコール症例のメガリンをはじめとする微量バイオマーカーの定量解析に必要な項目(試薬・物品・検査費用など)への支出を予定している。併せて、本年度は最終年度であり、学会発表および論文投稿に関する経費の支出を予定している。
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