2012 Fiscal Year Research-status Report
MALDI-TOF-MSを使用した感染症迅速診断システムの開発
Project/Area Number |
24659286
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Research Institution | Tenri Health Care University |
Principal Investigator |
小松 方 天理医療大学, 医療学部, 准教授 (00626814)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松尾 収二 天理医療大学, 医療学部, 教授 (20626816)
近藤 明 天理医療大学, 医療学部, 講師 (10570236)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 質量分析 / 臨床微生物学 / 感染症迅速診断 |
Research Abstract |
【はじめに】マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(Matrix-assisted laser desorption ionization-time of flight mass spectrometry, MALDI-TOF-MS)を応用して,臨床材料に含まれる病原性細菌を検体が検査室に提出されてから30分以内に同定を可能とする新しいシステムの開発を試みた。 【方法】測定機器はMALDI バイオタイパー(Bruker、以下MALDI)を使用した。臨床検体は膿尿かつグラム染色で細菌を確認した59件(単独菌感染のみ)を使用した。尿中炎症細胞と細菌分画の分離は低遠心法と我々が考案したフィルター法の2法を検討した。2法の成績は分離株のMALDIの同定結果と比較した。 【結果および考察】MALDIの検出感度は10^6 CFU/mLであり、原尿を使用したグラム染色による感度と類似した。尿59件について、分離株の同定菌名と一致したのは、グラム陰性菌群で低遠心法 84%(37/44)、フィルター法89%(39/44)、グラム陽性菌群で低遠心法 73%(11/15)、フィルター法33%(5/13)であった。フィルター法は尿を直接濾過するだけで細菌分画を抽出でき操作方法は極めて簡便であった。しかし、グラム陽性菌群の同定精度が低く、クラスターや連鎖形成をする細菌がフィルターを貫通しないことが理由であった。今回検討した方法はさらに改良の余地はあるが、新しい感染症迅速診断法として位置づけられる新手法となると判断した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
臨床検体(尿材料)を直接使用した検出法の構築は、菌塊やレンサ形成をするグラム陽性菌で検出精度が大幅に低下したが、グラム陰性菌では検討した方法で良好な成績が得られることが明らかとなった。 同時並行で実施していたMALDIを用いて培養集落を用いたβラクタマーゼの検出は、IMP-1産生株を使用してβラクタマーゼの精製を試みた。しかし、MALDIでの単独ピークとして特定できるに至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
臨床検体(尿材料)を直接使用した検出法の構築は、一部問題点が残されたため、同定精度のさらなる向上を目的として方法論の改良を試みる。改良法での成績を再度確認し、本検討を終了させる。 前年度で成果が得られなかったカルバペネマーゼ産生株の特定については遺伝子のクローニングを行った後に、再度精製を行いカルバペネマーゼの存在について検証を行う。これをコントロールして、臨床分離株について適応可能か否か検証する。また同様の方法でベロ毒素などの病原因子の検出が可能か否かについても検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
①病原因子および耐性因子の遺伝子学的解析等、株ライブラリー作成に関する費用50万円 ②菌体由来病原因子および耐性因子のクローニングおよび精製、並びにMALDI解析に関する諸費用50万円 ③臨床材料からの病原体直接同定法について臨床データとの相関解析に関する費用10万円
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