2012 Fiscal Year Research-status Report
生体内活性酸素種生成量の間接的推定法の開発と臨床応用
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24659288
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
水上 智恵 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 流動研究員 (10623738)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 水素 / 活性酸素 |
Research Abstract |
活性酸素種(ROS)は種々の酸化ストレス疾患に関与し、ROSの中でも特にヒドロキシルラジカル(OH・)は反応性がきわめて強く生体内寿命はきわめて短いため、ヒト全身におけるROSの直接計測は難しい。他方、水素分子(H2)が弱いながらも選択的にOH・を消去することが明らかになりつつある。本研究はROSまたはOH・をヒトで安全かつ定量的に評価する方法として、①低濃度H2ガス吸入または②H2含有水を飲み消失する水素量から間接的に推定する簡便法と③抗酸化剤投与前後の生体ガス中の超高感度質量分析から求める分析システムを開発し、種々の日常生活習慣や運動負荷時、循環器関連疾患におけるROS生成量計測の臨床試験を実施することを目的とする。いずれも生体内OH・の間接的評価法であるが、原理的にヒトに対して安全かつ簡便な世界初のヒト生体内OH・計測法となることが期待できる。また活性酸素種計測の臨床的ニーズが強くあり、新規臨床検査法として展開可能である。 当該年度は、H2含有水を飲み消失する水素量から間接的に推定する簡便法をヒトで確認を行った。そして、活性酸素種消失を生体内の動態とリンクさせ検証するために、ラットにH2含有水飲水を行い検討した。さらに循環器疾患モデルであるモノクロタリン(MCT)誘発性肺高血圧ラットにも同様にH2含有水の飲水を行い、対照群と比較検討を行った。 得られた呼気水素濃度曲線を、薬力学においての経口投与時における1次吸収1-コンパートメントモデルに倣い、H2含有水の生体内への吸収、排出などの動態の解析を試み、種差の異なる、ヒトとの比較を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は①低濃度H2ガス吸入または②H2含有水を飲み消失する水素量から間接的に推定する簡便法と③抗酸化剤投与前後の生体ガス中の超高感度質量分析から求める分析システムを開発し、種々の日常生活習慣や運動負荷時、循環器関連疾患におけるROS生成量計測の臨床試験を実施することである。 当該年度では、ヒトと同様にラットでのH2含有水飲水に伴い、生体内での水素消失を確認した。さらに呼気水素濃度曲線を、薬力学においての経口投与時における1次吸収1-コンパートメントモデルより、呼気排出ピーク値の時間tmax、呼気水素排気量Cmax、排出の傾きから吸収速度定数ka、除去速度定数keを求めた。ラットに比べ、ヒトの呼気排出ピーク値の時間tmaxは遅く、吸収速度定数kaも除去速度定数keも有意に低かった。これは飲水後、上部消化管吸収から呼気排気への解剖学的な距離と相まって循環時間が長いことが考えられた。 ラットでの実験では心拍数および血圧も同時に計測した。モノクロタリン(MCT)誘発性肺高血圧ラットと正常群とでは共に差はなかったが、血圧が体内へのH2含有水の取り込みである、収速度定数kaと有意に相関した。 さらに、水素摂取量と排出量の比より求めた水素消失率は、MCT群と対照群との間では有意な差は現時点では確認できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
循環器疾患モデルラットと対照群との群間での水素消失率の比較を、さらに突き詰める。また、抗酸化剤投与前後での水素消失率も同様に検討し、水素の抗酸化作用の立証を試みる。 H2含有水飲水と生体内循環経路が異なる、低濃度H2ガス吸入を行い比較検討を行い、有用性を検証する。 病態下におけるOH・生成量の臨床評価試験に先立ち、開発した計測技術を用い、成人50名を対象に低濃度水素ガス吸入、水素水飲水による水素消費量を計測する。生体内水素摂取量と血液・呼気凝縮液・尿中のOH・特異性の高い酸化ストレスマーカ(8-OHdG)/臨床検査成績/生活習慣(喫煙、飲酒、睡眠、運動、ストレス、食生活習慣など)との関連を探索する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
水素ガス計測装置である半導体つきガスクロマトグラフのカラムエージング代1回約10万円×2回。 血液・呼気凝縮液の酸化ストレスマーカであるBAP、oxy、d-ROM検出キット、尿中のOH・特異性の高い酸化ストレスマーカ8-OHdG検出キットなど約30万円 被験者への謝礼、消耗品、国内海外での成果報告発表での使用を計画。
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