2013 Fiscal Year Annual Research Report
げっ歯類の超音波コミュニケーションに着目した社会性の発達神経毒性試験法
Project/Area Number |
24659296
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
和田 博美 北海道大学, 文学研究科, 教授 (90191832)
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Keywords | 超音波 / ラット / 甲状腺ホルモン / 母子分離 / ペアリング |
Research Abstract |
【研究目的】①周産期の甲状腺ホルモン阻害によって発達障害を起こしたラットが、母子分離場面で超音波を発声し、母子間のコミュニケーションを発達させることができるかを明らかにする。②同上のラットが、成熟後に異性間で交わされる超音波コミュニケーションを発達させることができるかを明らかにする。 【研究方法】妊娠ラットを被検体とし、妊娠15日目~出産後21日目まで甲状腺ホルモン阻害剤メチマゾールを飲料水に混入して投与した。投与濃度は0%(統制群)、0.01%(低濃度群)、0.015%(高濃度群)とした。超音波の測定手順は次の通りである。<母子分離場面>①乳児ラットを母親から分離し、5分間放置。②その後5分間超音波発声を記録。測定は生後5、10、15、20日の4回行った。<ペアリング場面>①統制群の雌雄同士と高濃度群の雌雄同士、それぞれ6ペアを被検体とした。各ペアは実験当日に初めて対面した。②ペアリング用ケージにペアを入れ、5分間放置。③その後30分間超音波発声を記録。測定は生後91~94日まで4日間連続で行った。 【結果と考察】母子分離場面では、生後15日目の高濃度群および低濃度群の超音波発声回数、1回の発声の長さが統制群より増大し長くなった。超音波の周波数には影響がなかった。ペアリング場面では、嫌悪刺激に接したときに発する20~30kHzの超音波および好ましい刺激に接したときに発する50~70kHzの超音波ともに、甲状腺ホルモン阻害の影響はなかった。甲状腺ホルモン阻害は発達遅滞を引き起こす。このため新生児ラットはより長く母親の養育を必要としたため、生後15日に至っても超音波発声が増大したと考えられる。しかし嫌悪刺激や好ましい刺激に対する成熟後の超音波発声には、甲状腺ホルモン阻害の影響がなかった。周産期の甲状腺ホルモン阻害が超音波発声に及ぼす影響は、成熟期までには回復するといえる。
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