2012 Fiscal Year Research-status Report
新型ウェルシュ菌エンテロトキシンの同定と食中毒事例への診断的応用
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24659310
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Research Institution | Osaka Prefectural Institute of Public Health |
Principal Investigator |
余野木 伸哉 大阪府立公衆衛生研究所, 感染症部, 研究員 (20553613)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 食品衛生 |
Research Abstract |
ウェルシュ菌は他の食中毒菌と比較して大規模な食中毒を起こし、原因物質としてエンテロトキシンが知られている。ウェルシュ菌は汚染食品の喫食後、腸管内でエンテロトキシンを産生して下痢を起こす。臨床検査ではエンテロトキシン産生性の確認やエンテロトキシン遺伝子の検出を行う。近年、エンテロトキシン非産生性ウェルシュ菌による食中毒が報告され(東京都健康安全研究センター,http: //www.tokyo-eiken.go.jp/topics/clostridium/index.html)、新型エンテロトキシンの存在が示唆されている (食品由来感染症と食品微生物387-388(中央法規))が未だ毒素は未同定である。 申請者らは2009年と2010年に、エンテロトキシン非産生性ウェルシュ菌が原因と考えられる2件の食中毒事例を経験した。分離菌株に対するエンテロトキシン産生性とエンテロトキシン遺伝子に対する検査はいずれも陰性であった。分離菌株をSmaI処理によるパルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)に供試し、PFGE像が事例内でそれぞれ一致した。このことから分子疫学的にもウェルシュ菌による食中毒である可能性が強く疑われた。分離菌株の培養上清について下痢原性試験を行い腸管での液体貯留活性を確認した。以上より従来のエンテロトキシンと異なる新型エンテロトキシンの存在を確信し、液体貯留活性を指標に毒素の精製を行った。現在さらに研究を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は組換え毒素を発現し下痢原性の確認を行った。結果、イオタ毒素b成分類似タンパクが単独で下痢原性を有することを確認した。イオタ毒素a成分類似タンパクは単独で下痢原性を示さないことを確認した。イオタ毒素b成分類似タンパクの作用はイオタ毒素a成分類似タンパクによって増強される可能性が示された。イオタ毒素a成分類似タンパクの作用は今後さらに研究を行う。 当初の予定のように組換え毒素で下痢原性の確認を行い、特定した遺伝子がコードするタンパクが新型エンテロトキシンであると示した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで組換え毒素の発現を行いウェルシュ菌新型エンテロトキシンの同定を進めた。 平成25年度は新型エンテロトキシン遺伝子に対する遺伝子検出系を構築する。構築した遺伝子検出系を使用して、既存菌株や牛の糞便または食肉からの分離菌株における新型エンテロトキシン遺伝子の保有状況を調査する。可能であれば、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を作製して、新型エンテロトキシンに対するELISA法または逆受身ラッテックス凝集反応法の系を構築する。構築した系を用いて2009、2010年の2事例のCPE非産生ウェルシュ菌による食中毒事例の凍結保存患者便から新型エンテロトキシンを検出する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度組換え毒素によってイオタ毒素b成分類似タンパクが単独で下痢原性を有することおよびイオタ毒素a成分類似タンパク単独では下痢原性を有しないことを確認した。両成分が共存する場合、イオタ毒素b成分類似タンパクの活性はイオタ毒素a成分類似タンパクによって増強される可能性が示されたものの、その結果は明らかなものではない。 平成25年度は上記のa成分とb成分の相互作用を明らかとするとともに、遺伝子検出系を構築して牛の糞便や食肉における新型エンテロトキシン産生性ウェルシュ菌の汚染実態調査を行う。ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を作製して、新型エンテロトキシンに対するELISA法または逆受身ラッテックス凝集反応法の系を構築する。構築した系を用いて2009、2010年の2事例のCPE非産生ウェルシュ菌による食中毒事例の凍結保存患者便から新型エンテロトキシンを検出する。 本研究費は以上の研究を遂行するために使用する。
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