2012 Fiscal Year Research-status Report
調剤業務に伴う薬物曝露に起因する健康障害とその対策に関する研究
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24659319
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
井奈波 良一 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10168411)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 社会医学 / 産業衛生 |
Research Abstract |
調剤業務による健康障害について調査するため,最初に,病院薬剤師495名,および対照として,現在調剤業務を行っていない行政薬剤師84名に対して,自覚症状,業務内容,作業環境,仕事満足度および業務上のストレス因子に関するアンケート調査を行った。回答はそれぞれ314名(63.4%),76名(90.5%)から得られた。病院薬剤師では,対照の行政薬剤師と比較して,くしゃみ,鼻水,鼻閉といった鼻の症状を有する者の割合が33.1%(対照21.1%)と有意に高かった。これらの症状は,男性では調剤業務,精神神経科の調剤,調剤室内の集塵装置非設置,小規模病院勤務との関連がみられ,女性では調剤業務および錠剤粉砕との関連が認められた。次に,調剤業務開始後に気づくようになった自覚症状の割合について,先に実施した調剤薬局薬剤師を対照とした調査結果との比較を行った。病院薬剤師では調剤薬局薬剤師と比較して,調剤業務開始後に気づくようになった眼の症状,鼻の症状,口腔の症状,咽頭の症状の割合が男女ともに低かった。これら症状への対処としてはマスクの着用が47.6%と最も高かったが,そのうち効果が認められたのは31.0%であった。仕事および家庭生活の満足度については,病院薬剤師では行政薬剤師より低かった。しかし仕事満足度と自覚症状との関連は認められなかった。病院薬剤師では,行政薬剤師と比較して,仕事への身体的・心理的負担感および対人関係によるストレスの自覚が高くなっていた。薬局の粉塵環境に関して、1か所の調剤薬局で、実際に粉塵測定を行ったが、集塵装置が効果的に作動していたためか、粉塵の量はごく微量であった。さらに、病院の調剤室については,調査対象を21か所選定するとともに,従事者から自覚症状との関連についての聞き取りを行った。調剤業務に支障とならない上での測定プロトコールを作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調剤業務による健康障害について調査するため,病院薬剤師および対照として,現在調剤業務を行っていない行政薬剤師に対して,自覚症状,業務内容,作業環境,仕事満足度および業務上のストレス因子に関するアンケート調査を行った。回収率は63.4%,90.5%と、予測より高い回収率になった。また、薬局の粉塵環境に関する調査は、1か所の調剤薬局でしかできなか。しかし、病院の調剤室については,調査対象を21か所選定するとともに,従事者から自覚症状との関連についての聞き取りを行った。さらに調剤業務に支障とならない上での測定プロトコールを作成できた。
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Strategy for Future Research Activity |
調剤室の粉塵測定の許可が得られた21病院について、順次、作業環境の分析(室内の気流、集塵装置の有無および種類、設置場所等)、粉塵測定を実施し、集めた粉塵の内容について分析する。また、平成24年度に病院薬剤師を対象に実施したアンケート調査の詳細な解析を実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に実施したアンケート調査の費用が予定より安く済んだため、繰り越し金が生じた。しかし、調剤室の粉塵測定は3年間で10カ所を予定していたが、21カ所と予定より増えたため、委託費用が不足する可能性がある。不足分をこの繰越金で補填する。また、アンケートの詳細な解析が済んでないため、データの解析の補助、結果の整理(図表作成)等のために補助員1人を2か月雇用するために人件費を使用する。
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