2013 Fiscal Year Research-status Report
調剤業務に伴う薬物曝露に起因する健康障害とその対策に関する研究
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24659319
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
井奈波 良一 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10168411)
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Keywords | 社会医学 / 産業衛生 |
Research Abstract |
病院薬剤師の職業性ストレスを明らかにする目的で、前年度に自記式アンケート調査を実施した病院薬剤師314名(男性154名、女性160名)を対象に職業性ストレスに関する項目について分析した。その結果、仕事でストレスを感じている対象者の割合は、男性が83.3%、女性が85.4%で差がなかった。年齢と調剤業歴を調整したストレスの原因と考えられる因子の素点平均には、いずれの項目も有意な男女差はなかった。仕事のストレス判定図から読み取った「総合した健康リスク」は、標準集団の100に対して、男性が102.3、女性が97.4であった。年齢と調剤業歴を調整した「基本的業務」および「雇用・将来」のストレス総合点は、男性が女性より有意に高かった。一方、「職業的自立・専門性」のストレス総合点は、女性が男性より有意に高かった。以上の結果から、薬剤師が病院薬局に勤務するにあたって感じるストレスには、性差があることが明らかとなった。次に精神科病院(4施設)における調剤室内の浮遊粉じん量測定及び捕集した浮遊粉じんの成分分析を実施した。成分分析の対象は、院内でよく処方されるクロルプロマジン、ハロペリドール、レボメプロマジン、オランザピン、リスペリドン、プロメタジン、ゾピクロンの8成分とした。浮遊粉じん測定は、調剤室内の平均的な状態を把握する測定(A測定)及び労働者のばく露が最大と考えられる場所と時間における気中濃度測定(B測定)をデジタル粉じん計にて実施した。浮遊粉じん成分分析は、浮遊粉じんを捕集したろ紙に蒸留水10mLを加え、超音波で30分間抽出を行った。この抽出液をメンブランフィルターにてろ過後、LC/MS/MSにて多成分一斉分析を実施した。その結果、調剤室内に集塵装置が設置されていない1施設は、他の3施設と比較して、浮遊粉じん濃度も高く、また、捕集した粉じんからも薬物(ゾピクロン)が検出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
病院薬剤師の職業ストレスの性差を明らかにすることができた。また、薬局の粉塵環境に関する調査を、4施設の精神病院で実施でき、調剤室内に集塵装置が設置されていない1施設は、他の3施設と比較して、浮遊粉じん濃度も高く、また、捕集した粉じんからも薬物(ゾピクロン)を検出することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
調剤室の粉じん測定の許可が得られた21病院のうち平成25年度に測定が実施できた4病院以外の病院について、順次、作業環境の分析(室内の気流、集じん装置有無および種類、設置場所等)、粉じん測定を実施し、集めた粉じんの内容について分析する。また、これらの病院の薬剤師を対象にアンケート調査結果と作業環境測定結果との関係を分析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
委託で実施する調剤室の粉じん測定と粉じん成分測定を実施できた病院が、21病院中4病院しかなく、委託報告書を受け取っていなため、支払いが次年度なり、繰越金が生じた。 調剤室の粉じん測定と粉じん成分測定を実施できなかった17病院について、繰越金も使って委託で実施する。また、アンケート内容と調剤室の作業環境測定結果等との関係に関する解析が済んでないため、データ解析の補助、結果の整理(図表作成)等のために補助員1人を2か月雇用するために人件費を使用する。
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