2013 Fiscal Year Research-status Report
法医学的年齢推定法開発の新しい展開―年齢依存性転写因子からのアプローチ―
Project/Area Number |
24659335
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
飯田 礼子 福井大学, 医学部, 准教授 (40139788)
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Keywords | 法医学 / 転写因子 |
Research Abstract |
本研究は、(1)培養細胞やノックアウトマウスなどを用いて、トランスクリプトーム解析等によって年齢依存性転写因子Rhitにより転写制御される遺伝子を検索・同定する。(2)転写抑制因子 Rhitの遺伝子発現機構を解析し、分子生物学的手法によってその年齢依存性の分子論的基盤を明らかにする。(3) 年齢依存的に発現変動する転写因子遺伝子をプロテオーム解析により網羅的に検索・同定する。の3項目を目的として計画した。平成25年度に得られた研究成果を以下に示す。 (1) KOマウスの表現型解析 前年度に作製したRhit-/Rhit-マウスの表現型解析を行った。①腎におけるmRNA発現をmicroarray法によって網羅的に比較したところ、36種類の高発現と45種類の中等度発現上昇、および48種類の発現減少を示す遺伝子群が明らかとなった。②Rhit-/Rhit-マウスでは腎小体の軽微な発達不全、精巣における軽微な限局性精細管萎縮などが観察されたが、顕著な病理組織学的病変は認められなかった。③血液生化学的検査から、Rhit-/Rhit-マウスでは正常マウスに比較してアミラーゼやリパーゼなどの活性の上昇が認められた。 (2)M-LPおよびRhitの機能および発現の分子論的基盤の解析 ①M-LPH遺伝子内のRhitH結合部位の同定 RhitHは、M-LPH遺伝子のintron 1に含まれるTtk binding siteに結合して発現抑制を行うことを確認した。②遺伝子発現抑制に関与するKRAB boxやzinc fingerドメイン内のアミノ酸置換を惹起する非同義置換型SNP(9座位)に着目し多集団における分布調査と遺伝子型―活性相関解析を実施した。SNP p.Cys461Serなどは発現抑制効果を減弱させたが、これらのfunctional SNPsは多集団においてmono-allelicな分布を示した。従って、RhitHの機能を低下させるSNPは遺伝的多様性に乏しいことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ノックアウトマウスの表現型解析によってRhitの生理的機能に関する手掛かりを得ることができた。さらに、M-LPとRhitの機能に関する細胞生物学的な解析によって、これらの分子の発現と加齢との相関を示唆するデータが得られており、両分子の生理的機能の解明に向けて大きく前進した。しかし一方、目的の一つである年齢依存性発現分子の法医学的利用の面での成果はあまり得られなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究目的(1)及び(2)については、着実に成果が上がっている。作製したノックアウトマウスを交配させ、病理学的解析や分子生物学的解析を行うことにより、今後、新しい発見につながるような成果が期待できる。 上記の理由により、より効率よく成果を上げるため、今後(1)および(2)について精力的に研究を推進し、研究目的(3)を当面保留する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究用試薬などの消耗品を「キャンペーン」時に購入するなどした ため、当初計上していた物品費が予定額よりも少なくなった。 金額が少額であるので、翌年度分の研究費の物品費と合わせて、試薬類の購入などに充てる予定である。
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Research Products
(3 results)