2012 Fiscal Year Research-status Report
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24659340
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
大澤 資樹 東海大学, 医学部, 教授 (90213686)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 文子 東海大学, 医学部, 准教授 (70328128)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 循環器 / 石灰化 / 動脈 / ゲノム / 病理学 |
Research Abstract |
動脈石灰化は、大動脈解離瘤形成や虚血性心疾患の原因となり、法医学領域で遭遇する機会の多い内因性急死の重要な基礎疾患である。本研究は、剖検例を用いた顕微鏡下での、動脈硬化性変化とは独立した動脈石灰化に焦点を絞った形態学的な評価法を確立することを目的としている。2007~2010年の4年間にわたり161症例を集め、AHA分類に従って6段階に動脈硬化病変を分類した。薄切標本に対しH&E、EVG、コッサ染色、並びにMGP,AHSG、MMPの骨細胞外マトリックスタンパクに対する一次抗体に用いた免疫組織化学検討を行った。粥腫形成を認めたものは126例で、そのうちびまん性石灰化106例、微細な石灰化24例、粥腫を欠く内膜の広範な石灰化24例、骨化して骨髄形成を認める8例に大きく分けられた。粥腫を伴う石灰化には、60%に中膜の断裂を認めた。コッサ染色は、いずれの石灰化例でも一部ないし全体に陽性を示した。免疫組織化学的検討は、粥腫に伴うびまん性石灰化、粥腫を伴わない石灰化では、MMP群の抗体の陽性率は40-50%であり、石灰化部位および粥腫内にびまん性に陽性を示した。AHSG,MGPはほぼ全例で陽性であった。骨髄形成を認める石灰化および微少石灰化例では、MMP群で全例陰性、MGP,AHSGは全例陽性であった。組織学的に大動脈の石灰化は、粥腫に伴うびまん性石灰化、粥腫内の微細石灰化、粥腫を欠く内膜の広範な石灰化、骨化し骨髄形成を伴う石灰化の4タイプに分類できると結論付け、分類化にはコッサ染色や抗MMP抗体を用いた免疫組織化学が有効と判断した。今後この分類法により、石灰化進行群と非進行群に分け、動脈石灰化の危険因子を探索していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目標とした200検体には至らなかったが、161例の大動脈パラフィン包埋された組織片を準備することができている。年齢・性別・病歴・喫煙の有無・人工透析の有無のみを確認可能な条件で、連結不可能な状態にして利用している。これらを用いた大動脈組織標本における石灰化の病理学的評価は、段階をつけておおむね評価可能なクライテリアは確立できたと考えている。しかし、グループ分けした上で統計解析するにはさらなる症例数の積み重ねの必要とも考えている。本年度中に学会発表の予定であるが、論文にまとめる時間の確保が難しいのが現実であるが、取り組みを始めている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に161症例に基づき動脈石灰化を大きく4タイプに分類できることを確認できたので、本年度はこの分類に適した特殊染色や免疫組織化学の方法を確立し、顕微鏡下での特徴的な所見を提示できるように、さらに症例数を増やして探ってゆきたい。さらに取り組むべき課題は、年齢を補正した上で、動脈石灰化を評価する系に従い分類行い、DNA解析に進展させることである。異所性石灰化に関連するとされる遺伝子群として、アパタイト形成に直接関与するとされるfetuin、MMP類と、動脈石灰化の関連要素としてはサイトカインなど炎症性因子など30余りが想定されている。いくつかの遺伝子は、エクソンが20以上と巨大であり、解析は容易ではないので、次世代シークエンサーを用いて、メガベースレベルの大量配列決定を一度に行ってゆく。得られた配列情報を解析し、タンパク欠損につながるような変異や非同義置換などの特異な変異を見つけ出し、意味づけを加えてゆく。さらに、症例数が不十分かもしれないが、SNPに対しては石灰化の程度を段階付けした評価群に対し連鎖解析を実施してゆき、統計学的処理の上、有意なSNPを同定してゆく。最終的に、動脈石灰化の遺伝的リスクファクターの同定までもってゆくことを目標としている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(2 results)