2012 Fiscal Year Research-status Report
新しいペプチドーム解析法を用いた飲酒による血圧変動起因物質の探索
Project/Area Number |
24659341
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Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
若林 一郎 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (70220829)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
羽竹 勝彦 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (40164842)
丸茂 幹雄 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (40333950)
武田 裕司 山形大学, 医学部, 助教 (90302299)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | アルコール / 循環動態 / 血圧 / フラッシング反応 / ペプチドーム解析 |
Research Abstract |
本研究の目的は飲酒に伴う血圧変動の原因を探求することにある。飲酒直後に出現する血圧低下の原因物質の候補として、これまでにアセトアルデヒド、プロスタサイクリン、カリクレインなどが挙げられてきたが、いまだ決定されていない。一方、飲酒後数日して出現する血圧上昇の原因としては、交感神経系やレニン-アンギオテンシン系の活性化やさまざまな体液性因子の関与などが報告されているが、その詳細は明らかにされていない。本研究では、最近開発されたBLOTCHIP®を用いたペプチドーム解析の技術を用いて、飲酒後に変動するペプチドおよびその断片中の血圧変動を惹起する物質を探索する。この方法ではアルブミン等のタンパク質除去,標識化,酵素消化など,従来のプロテオーム解析技術では必須だったあらゆる前処理操作を省略でき,包括的なペプチド検出と定量化が可能である。初年度である平成24年度には健康ボランティアに対して飲酒負荷実験を行った。予備実験として飲酒前後の循環動態をモニターし、血圧変動の時間帯の同定を試みた。その結果、全ての予備実験被験者において飲酒後30分以内に収縮期および拡張期血圧が10 mmHg以上の低下を示し、さらに飲酒後3時間以内には、全例で血圧はほぼ飲酒前値に回復した。一方、その後の血圧上昇については、各被験者間で一定せず、実験のための共通した血圧上昇の時間帯を設定することができなかった。そこで、本研究では飲酒に伴う血圧低下に焦点を当て、その原因物質を解明することにし、予備実験結果から血液検体の採取時間を決定した。その後、本実験において、白ワイン(体重kgあたり3 ml)を10分以内に負荷前後で血圧、脈拍、フラッシング症状などを観察するとともに、経時的にペプチドーム解析用の血液検体を採取し凍結保存した。そして、現在プロトセラ社と共同で採取検体を用いてペプチドーム解析を施行中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度行った飲酒負荷実験の予備実験において、飲酒後の血圧変動の時間経過を検討した。その際に、予想以上に血圧上昇の相に個人差が大きく、ペプチドーム解析用の検体採取を統一的に行うことが困難と判断し、血圧低下因子のみを探索することにした。この予備実験に時間を費やし、本実験の実施が予定より遅れた。しかし、ペプチドーム解析に高額経費が必要であり、検体の反復測定は予算的に困難であることから、慎重な予備実験の施行は意義があり、これによって今後の本研究の着実な進行が期待できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
飲酒後に出現する血圧低下原因物資のペプチドーム解析による解明は、新規の降圧物質の探索につながる可能性がある。現在実施中のペプチドーム解析の結果をもとにして、平成25年度には降圧物質の候補ペプチドを選定し、その合成ペプチドを作成し、生理実験によりペプチドの生理活性の有無を確かめる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に予定されていたペプチドーム解析の実施がやや遅れ、実際平成25年度初めにかけて実施しており、このペプチドーム解析の経費を繰り越された予算から支出する予定である。さらに今年度は解析情報をもとにしてペプチド合成と合成ペプチドを用いた生理実験のための予算の使用を予定している。
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