2012 Fiscal Year Research-status Report
段ボール製ベッドによる東日本大震災避難者の健康被害の改善、防止効果の検討
Project/Area Number |
24659342
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
奈良 正之 東北大学, 大学病院, 准教授 (70374999)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青木 正志 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70302148)
玉田 勉 東北大学, 大学病院, 助教 (80396473)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 段ボール製ベッド / 災害医療 / 東日本大震災 / 血圧 / D-dimer / SF-8 |
Research Abstract |
大災害後には呼吸器系や心血管系を始めとする様々な疾患発症率の増加が報告されている。その原因の1つとして避難所の劣悪な生活環境が挙げられる。その改善方法の1つとして避難所に段ボール製ベッドを導入することを考えた。ベッドの導入によって健康状態は改善するのか?我々は調査を行った。血圧は収縮期、拡張期ともに導入1ヶ月後に下降した(収縮期圧前 146 mmHg、後 131 mmHg、拡張期圧前 85 mmHg、後 77 mmHg。いずれもp<0.001) 。下肢の筋力を反映する検査(Timed up & go test)も1ヶ月後に改善した(前 8.2秒、後 7.7秒、p<0.01)。血液凝固能を反映するD-dimerは、全例での調査では有意な差は無かったが(前 0.43 ug/mL、後 0.35 ug/mL)、もともと高めの者は1ヶ月後には下降する傾向を示した(前 1.13 ug/mL、後 0.67 ug/mL、p=0.063)。症状に関するアンケートでは、導入前に咳嗽、腰痛、不眠の症状を持つ避難者は、いずれも有意な差を持って1ヶ月後に改善した。健康関連QOLを評価できるSF-8では、身体的健康の4項目、精神的健康の4項目の全8項目の内、精神的項目の「社会生活機能」を除く7項目で、ベッド導入後に有意な差を持って改善した。以上の結果は、血圧が下がること及びもともとD-dimer(凝固能)の高い者が下がる傾向から、ベッドの導入は心血管系疾患の発症を抑える可能性を示唆している。また、下肢筋力の改善からは、高齢者の筋力低下から来る廃用症候群からの回避を促す可能性が考えられる。さらに、アンケート調査からはベッド導入は身体的な改善に留まらず、精神的な健康状態をも改善する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【研究実績の概要】に記したごとく、ベッド導入により身体的・精神的な健康状態の改善が確認され、本研究の目的をかなり達成できたと考えている。現在、今までの結果をまとめて英文誌に投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
調査開始直後より、避難者は日々避難所から一般住宅や仮設住宅に移動し、現在、全ての避難所が閉鎖されている。従って、ベッド導入時や導入1ヶ月後の時と同様な調査はできなくなってしまった。しかし、過去の大震災からの報告では、仮設住宅に移った後でも避難者の血液凝固能(D-dimer)の異常が続くことが指摘されている。因って、可能な限り元避難者の血液凝固能などの把握に務めていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成25年度請求額とあわせて、平成25年度の研究遂行に使用する予定である。
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