2013 Fiscal Year Annual Research Report
段ボール製ベッドによる東日本大震災避難者の健康被害の改善、防止効果の検討
Project/Area Number |
24659342
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
奈良 正之 東北大学, 大学病院, 教授 (70374999)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青木 正志 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70302148)
玉田 勉 東北大学, 大学病院, 講師 (80396473)
|
Keywords | 災害医療 / 総合医療 |
Research Abstract |
以前より大災害後には心血管疾患を始めとする様々な疾患の発症率が上昇することが知られている。その原因の1つとして、避難所での劣悪な環境が挙げられる。その環境を少しでも改善するべく、避難所に段ボール製ベッドを導入し、その効果を調査・検討した。宮城県石巻市の災害避難所で、同意の得られた43名に段ボール製ベッドを導入し、1ヶ月後のフォローが可能であった30名で観察調査を行った。血圧は有意に下降した(収縮期血圧 前:146mmHg、後:131mmHg(p<0.001)、拡張期血圧 前85mmHg、後:77mmHg(p<0.001))。複合的動作能力を評価するtimed up & go testでも、1ヶ月後に有意な改善を認めた(前:8.2秒、後:7.7秒(p<0.01))。血液凝固能を評価する血液d-ダイマーテストでは、被調査者全員では有意な差を認めなかったが、ベッド導入前から高値(0.05ug/ml以上)であった人は、1ヶ月後に低下する傾向を示した(前:1.1ug/ml、後:0.7ug/ml(p=0.063))。導入前に咳嗽、不眠、腰痛の症状のあった人は、いずれも有意に改善した。さらに、さらに、8項目の質問からなるアンケートで、健康関連QOLを評価するSF-8では、8項目中7項目で有意な改善を認めた。しかも、身体的健康度と精神的健康度の両者で有意に改善していた。段ボール製ベッドは安価(原価2,000円程度)で場所をとらず、大量生産が可能であり、かつ丈夫(平均加重で約10トンに耐える)である。よって、得られたデータを併せて考えれば、本ベッドは災害避難所の劣悪な環境にあって、有効な影響を及ぼし得る事が示唆された。
|