2013 Fiscal Year Research-status Report
東日本大震災後の被災地仮設住宅在住高齢者を対象とした前向きコホート健康調査・研究
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24659343
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
冲永 壯治 東北大学, 大学病院, 准教授 (30302136)
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Keywords | 東日本大震災 / 高齢者 / 応急仮設住宅 / コホート研究 / 介護予防 |
Research Abstract |
本研究は3年間の前向きコホートであり、各年度にアンケート調査を行う。従ってその成果は第3回の調査をもって達成される。現在第1回のアンケート調査・認知症調査の横断的解析を行っており、仮設在住高齢者に喫緊の解決課題がないか検索中である。今のところ特に重大な事象は認めておらず、その結果を平成25年3月25日に気仙沼市に報告した。 気仙沼市が設置した仮設住宅に住む65才以上の高齢者を対象とする本研究は、特に島嶼部に焦点を当てている。大島地区の地理的特徴としては、1.本土との交通手段はフェリーボート、2.主要産業は沿岸漁業で、特に養殖業が盛ん、3.代々受け継がれた家系が多い、などが挙げられる。第1回アンケート調査の結果から、大島地区を気仙沼市の他の地区と比較すると、ストレスの尺度であるK-6スコアが比較的低い(ストレスの少ない)結果となった。K-6スコアの6項目の返答を個別にみると、大島地区では多くの項目において、ストレスが少ない群(多数派)とストレスが強い群(少数派)の二峰性を示した。これは大島地区のみにみられた特徴である。この傾向を説明できるデータは現在得られていないが、ストレスが強い高齢者に何らかのイベントが起こる可能性があり、第2回以降の調査で明らかにしてゆきたい。大島地区の他の特徴としては、日常生活動作(ADL)において、手段的ADLはさほど他地域と違いはないが、社会的ADLにおいて、より活発な傾向がみられた。活動状況も良い傾向があり、また運動においても移動能力が優れている傾向であった。こういった島嶼部の優れた傾向の背景としては、自活の精神が要求される生活環境にあると推測される。 第1回の分析では、地域ごとの比較(気仙沼市街地区、本吉地区、唐桑地区、大島地区、岩手地区)も行っている。多角的に検討しており、地域間の相違から介護予防に繋がるヒントが得られると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の第1回アンケート調査及びタッチパネルを用いた認知症調査を秋頃には開始したかったが、調査が開始できたのは年が明けてからであった。その理由は、本調査が気仙沼市と共同で行う性格上、その協定締結に時間を要したからである。被災地の行政機関である気仙沼市が抱える多くの問題に対して、市職員の慢性的な人手不足があり、気仙沼市は東北大学加齢医学研究所との協議に時間を割けなかったからである。しかし市の担当職員は多忙の中、本調査の意義を理解され、多くの労を提供されて協定締結に至った。 その後は順調に調査は進んでいる。第2回のアンケート調査・認知症調査を平成25年内に終え、現在その集計を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は本研究の最終年度であるが、予定される調査は、これまで行ってきたアンケート調査とタッチパネルを用いた認知症調査の第3回を行う。加えて、調査協力者を対象に、1.気仙沼市又は後期高齢者広域連合が保有する健康診査(国民健康保険と後期高齢者医療保険)の結果の照合、2.地域包括支援センタ―が保有する生活機能基本チェックシートの結果及び介護予防プログラム実施の情報の照合、3.地域包括支援センタ―が保有する生活機能基本チェックシートの結果及び介護予防プログラムの実施状況の照合、4.市が保有する介護保険要介護認定に関わる情報の照合を行う。 計3回のアンケート調査・認知症調査の集計と上記データの照合を行い、以下のことを明らかにする。1.罹患率、死亡率:仮設住宅という特殊環境で発生しやすい健康障害を特定する。死亡率を調べることで健康障害の重篤度を知ることができる。2.危険因子:患者背景を詳細に記録し、イベントとの関連を調べる。寄与する危険因子を評価して、公衆衛生対策につなげる。3.特に精神・神経科領域の事象について:予想される心の問題として、(1)うつ病、(2)閉じこもりや不活発、(3)アルコール依存、(4)孤独死や自殺などがある。高齢者の心の状態を定量化するチェックリストによって経時的変化と実際の事象との関連を危険度として評価する。4.認知機能の変化:第1回調査の結果、仮設高齢者では認知機能が同年代の日本人平均より低下している傾向が示唆された。この真偽を明らかにするとともに、3年間の仮設生活が与えるストレスと認知機能の関係を明らかにする。 平成27年ころから、仮設在住者の公営災害住宅への転居が始まる高齢者の多くは老老ないし独居となり、しかも災害公営住宅は高齢者にとって終の棲家となる可能性が高い。本研究の成果は、新たに始まる災害公営住宅での生活に生かされなければならないと考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成26年度は本研究の最終年度であるが、予定される調査は、これまで行ってきたアンケート調査及びタッチパネルを用いた認知症調査の第3回を行う。加えて、調査協力者を対象に、1.気仙沼市又は後期高齢者広域連合が保有する健康診査(国民健康保険と後期高齢者医療保険)の結果の照合、2.地域包括支援センタ―が保有する生活機能基本チェックシートの結果及び介護予防プログラム実施の情報の照合、3.地域包括支援センタ―が保有する生活機能基本チェックシートの結果及び介護予防プログラムの実施状況の照合、4.市が保有する介護保険要介護認定に関わる情報の照合を行う。 以上のように、最終年度には新たな調査内容が加わる。その出費に備えて、最終年度により多く研究費を残す必要があった。 1.上記のごとく、収集するデータは各地域に散在する。このため、交通費、宿泊費、人件費等を要する。2.統計分析には専門家の意見を取り入れる必要がある。信頼できる統計の専門家に依頼する費用等。3.共同研究者との会議開催費。4.学会発表の諸費用(海外を含む)。5.研究成果を気仙沼市に伝達し、介護予防プログラムを提案。プログラムの構築と実施の費用。6.研究成果を学術誌に投稿する諸費用。
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Research Products
(3 results)