2012 Fiscal Year Research-status Report
過敏性腸症候群のエンドフェノタイプに対する感受性遺伝子とストレスの影響
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24659344
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
福土 審 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80199249)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 脳腸相関 / 過敏性腸症候群 / バイオマーカー / 消化管知覚 / 消化管運動 / 遺伝子 / 炎症 / ストレス |
Research Abstract |
過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome; IBS)はストレス関連疾患の代表である。IBSの根源を解明することは、ストレス関連疾患全般に応用可能な鍵を得ることに等しい。Rome III基準を満足するIBS 123例を対象とし、健常者153例を対照とした。正中肘静脈からヘパリン採血し、白血球を分離し、DNAを抽出した。IBSの病態においてはcorticotropin-releasing hormone (CRH)が重要な役割を持つ。そこで、日本人における一定の多型の保有率が予想されるCRH受容体1(CRH-R1)遺伝子rs7209436、rs242924、rs110402を標的とし、direct sequenceで確認した後、real-time polymerase chain reaction法でgenotypingを行った。対象者の情動は、Perceived-Stress Scale (PSS)、Self-rating Depression Scale (SDS)、State-Trait Anxiety Inventory (STAI)で定量化した。結果は、IBS群が健常群と比較し、rs7209436(p = 0.01)、rs242924(p = 0.02)で有意に多くのTTを保有していた。また、便通異常のグループ間(健常、下痢型、便秘型、または混合型)とrs7209436のT allele(p = 0.008)、rs242924のTアリル(p = 0.019)、rs110402(p = 0.047)の対立遺伝子、TATハプロコピー数(p = 0.048)との間に有意な関連があった。CRH-R1遺伝子型およびハプロタイプとIBSならびに便通状態が関連した。これらの因子間の分析により、IBSならびにその中間表現型との関連を証明することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は堅調に進んでおり、仮説が証明されてきている。論文が専門誌に掲載されるだけでなく、本研究には社会的な関心が寄せられ、その実、NHKの健康番組などで研究成果が社会に還元されている。社会に対する研究費使用の説明責任を十分に果たせていると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在の速度で研究を進めて行けば、目標を十分に達成できるものと見込んでいる。IBSのエンドフェノタイプと関連遺伝子の解析を進めて行くことにより、効率良くストレス下の生体内の健康維持機構とその破綻の端緒を把握し、これを種々の関連疾患に応用することが可能になると見込んでいる。 対象をIBS患者(n = 200)、健常者(n = 200)として、サンプル数を増加させる。 方法は、第1に静脈採血により、genotypeと生物学的endophenotypeを同定する。Genotypingは、血液検体から白血球を分離し、DNAを抽出する。これより、5-HTTLPR、5-HT3受容体遺伝子、一酸化窒素合成酵素(NOS)、CRH遺伝子、CRH受容体R1遺伝子、CRH受容体R2遺伝子を代表とする遺伝子多型を分析する。同時に、血液検体からCRH、histamine、HS-CRP、TNF-α、TGF-β、interleukin-1β、BDNF、microRNA-29aなどの血中バイオマーカーを同時に測定する。 第2に心理計量学的endophenotypeを同定する。これらはRome II/III Questionnaire、SIBSQ、MAPS Questionnaire、TAS-20、SDS、STAI、PSS、SRRS、Abuse Questionnaire、PBIからなる。更に重症胃腸炎の既往の有無、両親の過敏性腸症候群の有無を両群で分析する。 得られたgenotype-endophenotype-phenotypeから、cluster分析により、まずendophenotypic clustersを同定する。その上で、IBS全体という不均一な病態が混在する可能性があるものから、生物心理社会的に明瞭なまとまり(cluster)を構成するものの遺伝子-環境相関を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし。
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