2012 Fiscal Year Research-status Report
神経変性疾患モデルにおける神経免疫システムの解析と治療応用の検討
Project/Area Number |
24659352
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
松村 晃寛 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (20464498)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | アルツハイマー病 |
Research Abstract |
本研究はアルツハイマー病の複数モデルの動物を用いた動物実験により(1)神経変性時の生体反応としてのミクログリアを中心とした神経免疫システムの経時的推移を解析し、その神経保護作用の解明を試み、続いて(2)薬理学的治療や再生治療などの治療介入による神経免疫システムの変化を解析し、より有効かつ画期的な治療法を模索する。また可能であれば(3)神経免疫システムの障害と神経変性疾患の病態の関連を考察し、病態の解明も試みることを目的として開始した。 まずは(1)のための方法として急性アルツハイマー病モデル動物として健常マウス脳のBregmaから後方2 mm,左外側2 mm、深さ2 mmの部位にヒトリコンビナントAβペプチドをマイクロインジェクションしてAβ海馬投与マウスを作製し、注入1日後、3日後、1週後、2週後、4週後の脳組織学的解析を行った。Aβ注入側海馬において組織学的にAβの沈着は経時的に減少していく様子が確認された。ミクログリアは注入1日後からAβに集積しはじめて集積像は3日後、1週後と経時的に増加した後、そこをピークに2週後、4週後は減少していた。Aβ周囲にはアメボイド型と思われる腫大したミクログリアも一部あり、重なり像も認めていた。一方、アストロサイトはAβ注入1日後、3日後時点ではAβ周囲にとどまり、1週後以降でAβ部に集積していたが、Aβとの重なり像は認めていなかった。 以上から①マウス脳へのAβ注入に対してミクログリアは早期から活性型として集積し、貪食を推測させるような重なり像を認め、Aβ蓄積部は経時的に縮小することからミクログリアにはAβ貪食によるクリアランス作用があると考えられた一方、②アストロサイトはミクログリアより遅れてAβ注入1週間後頃から集積したが貪食を推測させるような像は見られず、直接クリアランス作用に関わっている可能性は低いと推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在、もう一つのアルツハイマー病モデルマウスとして変異型アミロイド前駆体タンパク質遺伝子、変異型プレセニリン1遺伝子を導入した2xTg-ADマウスの繁殖を行い、こちらも生後3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月、18ヶ月時点の脳について経時的に脳組織学的評価を行っている最中である。まだ時系列群の結果は出揃っていないが、生後3ヶ月のAD-Tg miceではAβ蓄積はほぼ認められず、以後経時的にAβ蓄積が増加していく傾向が見られている。ミクログリアはAβ周囲に集積が確認され、生後9ヶ月まではAβ増加とともに集積面積増大が確認されたが以降は横ばいとなっていた。アストロサイトもAβ蓄積部周囲に集積が確認されたが、こちらはAβ蓄積の増加に併行して集積面積が増大していた。この2xTg-ADマウスについての解析は当該報告書作成の時点ではまだ完遂していないが近日中には必要な個体数は出揃う見込みであり、平成24年度の研究計画における「1.アルツハイマー病モデル動物の作製」および「2.アルツハイマー病モデル動物における脳組織学的評価」は概ね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は前述のアルツハイマー病モデルマウスに対して、薬理学的治療や、末梢からの骨髄幹細胞移植による再生治療などの治療介入を行ない、モーリス水迷路などによる行動記憶評価や脳組織学的評価、生化学的評価にて治療効果を評価する。ミクログリアにはα7ニコチン性アセチルコリン受容体(α7nAChR)が発現しており、同受容体刺激によりミクログリアのAβ貪食が促進されるという知見があることから(J.Biol.Chem.285:40180401911,2010)、例えばα7nAChRアゴニストであるGTS-21やnAChRに対するAPL作用を有するガランタミンなどが薬理学的治療の候補として挙げられる。 また各アルツハイマー病モデルマウスに対してミクログリアに抑制的な作用が予測される薬剤等による介入を試み、行動記憶評価や脳組織学的評価、生化学的評価にて影響を評価する。例えばnAChR拮抗薬であるメカミラミンや選択的α7nAChR拮抗薬であるメチルリカコチニン(MLA)などが使用薬剤の候補として挙げられる。 最後に、ここまでの結果から、健常マウスに対して、より神経傷害的に作用するミクログリアへの介入を行い、ミクログリアを制御することでアルツハイマー病の病態を再現できないか検証・解析する方針を検討している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
現在、2xTg-ADマウスは当施設において繁殖しているが、平成24年度は繁殖状況が比較的良好で繁殖の際の母親になるマウスの購入をあまり多くは要さなかった。また、組織学的評価や生化学評価には各種抗体などの試薬も手持ちのものから使用し始めたため当初予定よりも研究費の支出が少なく「次年度使用額(B-A)」が生じた。 平成25年度の使用計画としては、繁殖の際の母マウスが加齢などにより繁殖率が低下した際には随時購入を必要になるため、一つはマウス購入費用としての使用を計画している。 また、組織学的評価や生化学評価には各種抗体などの試薬や、その他実験用の消耗品を要するため、それらの購入費用としても使用を計画している。 他に、研究成果の発表やその他、関連学会に参加して最新の知見を深めるための旅費への一部使用も計画している。
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[Presentation] 脳内アミロイドβに対する脳内グリア細胞の動態解析2012
Author(s)
松村晃寛, 鈴木紘美, 鈴木秀一郎, 山内理香, 林 貴士, 齊藤正樹, 久原 真, 川又 純, 今井富裕, 下濱 俊, 本望 修, 高田和幸, 北村佳久
Organizer
第53回日本神経学会学術大会
Place of Presentation
東京
Year and Date
20120522-20120525