2012 Fiscal Year Research-status Report
SRSF遺伝子のPTCバリアントを介した大腸がん悪性化の分子基盤
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24659370
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
桑野 由紀 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (00563454)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 選択的スプライシング / 機能性RNA / 大腸がん |
Research Abstract |
選択的スプライシング反応は、ゲノムの多様性を生み出すとともに、細胞内シグナルに応答して遺伝子発現を劇的に変化させる。近年、ヒト全遺伝子の約95%以上の遺伝子が、選択的スプライシングにより調節されていることが報告され、選択的スプライシング異常と発がんや神経疾患の関連性が注目されている。本研究では、選択的スプライシング調節因子Tra2 betaを含むセリン/スレオニンSplicing factor (SRSF)ファミリーより生成される、PTCバリアントに内在された新たな機能の解明を目指す。平成24年度の研究においては、 1. ヒトTra2 beta遺伝子のプロモーター解析及びクロマチン免疫沈降により、Tra2 beta遺伝子の酸化ストレス負荷時の発現調節メカニズムを明らかにした(Journal of Gastroenterology, 2013に報告)。 2. SRSF3ノックダウン細胞を樹立し、SRSF3が細胞周期のG1/Sチェックポイントの調節に与える影響を明らかにした(Oncogene, 2013に報告)。 3. PTCバリアントであるTra2 beta-4 RNAは、大腸がん細胞株HCT116及びヒト大腸がん組織に高発現することをin situ ハイブリダイゼーション法及びリアルタイムPCR法により見出した。 4.ビオチンでラベルしたTra2 beta-4 RNAを用いて、直接相互作用する可能性のあるRNA結合タンパク質を質量分析法によりスクリーニングし、ウエスタンブロットにより確認した。 以上のことから、SRSFファミリータンパク質の新しい細胞内機能を見出した。中途ストップコドン(PTC)を持ちタンパク質に翻訳されないTra2 beta-4 mRNAが大腸がん細胞株において機能性RNA分子として作用する可能性があるという新たな知見を得ることが出きた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時に記載した目的のうち、「PTCバリアントの発現誘導のメカニズムの解明」については、PTCエクソンに特異的に結合し、PTCバリアントのスプライシングを調節する可能性のあるRNA結合タンパク質を質量分析法において、すでに同定することができた。また、研究目的の「PTCバリアントの発現異常と消化管の発がんとの関連」については、ヒト検体Tissueパネルを用い、消化管がんとSRSFファミリーの各PTCバリアントの発現量の相関を解析することができた。 以上のことから、当初の研究の目的のために、実験はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策については、 2年目の当初の計画研究の通り、「PTCを含むエクソンの機能配列および標的分子」を中心に進める予定である。実験に必要なPTCバリアントの過剰発現系およびノックダウン系の樹立はすでに終了している。今後は免疫沈降とChIRP法、マイクロアレイおよび次世代シークエンスを組み合わせ、PTCバリアントと相互作用するRNAターゲットを網羅的に解析する。さらに、リアルタイムPCRを用いターゲットRNAのバリデーションを進める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、本研究の最終年度でもあり、申請時のすべての研究目的を達成することを目標とする。次年度の主な研究計画である、「PTCバリアントの発現異常と消化管の発がんとの関連」については、ヒト検体cDNAパネルおよびヒト消化器がん組織検体を用いて、免疫染色およびin situハイブリダイゼーションにより解析する。現時点で、当初の目標検体数の3分の1の解析が終了しており、残りは解析中であり、十分に次年度内に目標を達成できると考えている。 さらに、研究成果を報告するため、学会発表を予定している。国際誌への論文発表のため、投稿料としても使用予定である。
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Research Products
(7 results)