2012 Fiscal Year Research-status Report
生理的酸化ストレスに起因する肝線維化と発癌の特異的検出・評価系の構築
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24659376
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
稲垣 豊 東海大学, 医学部, 教授 (80193548)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 直明 東海大学, 医学部, 教授 (60096196)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 肝線維症 / 酸化ストレス / 非アルコール性脂肪肝炎 / コラーゲン遺伝子 |
Research Abstract |
酸化ストレスが非アルコール性脂肪肝炎(Non-alcoholic steatohepatitis, NASH)やC型慢性肝炎の進展に深く関わることは広く認識されているが、肝細胞壊死に伴う炎症反応などの2次的影響が大きく、酸化ストレスの影響を純粋に評価するには不向きである。本研究は、生体内の酸化ストレス発生量を生理的範囲で調節可能な遺伝子改変マウスを用いて、肝線維化の進展や発癌に及ぼす酸化ストレスの影響を直接的かつ特異的に検出・評価する世界初のモデル動物を構築することを目的としている。 初年度の実験では、ミトコンドリア電子伝達系のsuccinate dehydrogenase cytochrome b (SDHC)の遺伝子変異により酸化ストレスの亢進状態にあるトランスジェニックマウス(Tet-mev-1)に対して、ドキシサイクリンを1年以上にわたって長期間飲水投与し、肝組織内への炎症細胞浸潤や肝星細胞の活性化、さらには肝細胞周囲の線維化など、NASHの類似病変が惹起されることを明らかにした。一方で、線維化の程度にはマウス個体間で大きな差異があり、NASHの進展には遺伝学的な異常以外に複数の要因が関わっていることが推測された。 また、本Tet-mev-1マウスと、研究代表者自らが樹立したコラーゲン遺伝子プロモーターの活性化を高感度かつ特異的に検出可能なレポーター・マウスを交配することで、生理的範囲の酸化ストレスによる組織障害をin vivoで特異的かつ定量的に評価することを可能にした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本Tet-mev-1マウスが、NASHの進展過程における酸化ストレスの関与を評価する上で有用なモデル動物であることを証明するとともに、生理的な酸化ストレスによるコラーゲン遺伝子プロモーターの活性化を高感度に検出するin vivoの評価系を確立するなど、ほぼ予定通りの研究成果を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の評価系を用いて、高脂肪食で飼育した際のインスリン抵抗性と肝線維化進展に対する酸化ストレスの影響を直接的かつ特異的に評価するとともに、同マウスから分離した肝細胞と星細胞を共培養して、ドキシサイクリンの存在下・非存在下でコラーゲン遺伝子のプロモーター活性を比較定量することで、上記のin vivoの実験結果に理論的裏付けを与える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度は、本研究代表者の所属施設で継代維持されている遺伝子改変マウスを用いて評価系を確立することを目標に掲げたため、マウスの使用匹数も限られ、当初計上した研究経費を全額使用するに至らなかった。 次年度には、多数のマウスを用いて酸化ストレスの発生と高脂肪食の摂取が肝線維化進展に与える影響を複数群間で比較するとともに、分離培養した肝細胞や星細胞を用いたin vitroの実験も予定されているため、遺伝子改変マウスの飼育管理料の他、多くの試薬やプラスチック類の購入が予定されている。
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Research Products
(16 results)