2012 Fiscal Year Research-status Report
EGFR(上皮成長因子受容体)遺伝子変異陽性肺癌の分子遺伝学的発生母地の解明
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24659399
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
菊地 利明 東北大学, 大学病院, 准教授 (10280926)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | エクソーム解析 |
Research Abstract |
われわれの臨床試験(N Engl J Med. 2010;362:2380-8)も一助となり、上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異陽性肺癌は、EGFR-チロシンキナーゼ阻害薬によって制御可能な癌と捉えられるようになった。そして治療の観点から、EGFR遺伝子変異が疑われる肺癌を効率的に見つけ出すことが望まれ、「腺癌、アジア系人種、女性、非喫煙者」という患者像が浮かび上がってきた。このことはEGFR遺伝子変異陽性肺癌の発生母地として、何らかの遺伝学的背景があることを示唆している。この遺伝学的背景を再認識させられる症例を、最近われわれは相次いで経験した(J Thorac Oncol. 2008;3:311-3)。まずは、7人の兄弟姉妹のうち、4人の姉妹に肺癌が発症している家系で、うち3人の肺癌細胞でEGFR遺伝子変異を確認している。点変異と欠失変異の二種類の遺伝子変異が姉妹内で混在していたことは、EGFR遺伝子変異そのものが遺伝しているわけではなく、発癌を導く遺伝学的背景が家系内に伝承されていることを示唆している。続いて経験したのは、母娘の家族内発症例で、いずれもEGFR遺伝子に点変異を有する肺癌であった。娘の発症年齢が若く若年性肺癌であったことからも、発癌の原因に遺伝学的背景が推察された。そこで当該研究では、エクソーム解析(全エクソンのシークエンシング)と、全ゲノム関連解析(GWAS、 genome-wide association study)を行うことによって、EGFR遺伝子変異陽性肺癌の原因遺伝子異常を明らかにする。今年度は、当初の計画に従って、エクソーム解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異陽性肺癌は、「腺癌、アジア系人種、女性、非喫煙者」に多く、その発癌機構には遺伝学的背景が示唆されている。さらに最近われわれは、2家系6名の家族内発癌症例を経験し、その遺伝学的背景の存在を再認識させられた。そこで当該研究では、エクソーム解析と全ゲノム関連解析を行い、EGFR遺伝子変異陽性肺癌の原因遺伝子異常を明らかにする。今年度は、当初の計画通り、エクソーム解析を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に従って、EGFR遺伝子変異陽性肺癌の原因遺伝子異常を明らかにするために、全ゲノム関連解析を行う。さらに、今年度のエクソーム解析と次年度の全ゲノム関連解析の結果を合わせることによって、EGFR遺伝子変異陽性肺癌の原因遺伝子を同定し、その機能評価を行っていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成25年度請求額とあわせ、平成25年度の研究遂行に使用する予定である。
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