2012 Fiscal Year Research-status Report
ADPリボシルシクラーゼの妊娠高血圧腎症における役割
Project/Area Number |
24659409
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 信行 東北大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (40588456)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 恵美子 東北大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (20466543)
佐藤 博 東北大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (60215829)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 国際情報交換 / 高血圧 / タンパク尿 / 妊娠 |
Research Abstract |
妊娠高血圧腎症(preeclampsia, PE)は妊娠によって発症する蛋白尿をともなう高血圧であるが、その治療は不十分である。エンドテリン(ET-1)やアンジオテンシン(Ang II)はPEを悪化させる。サイクリック ADPリボースはET-1やAng IIによる細胞内Caの動員に重要であることが知られており、我々は、その合成酵素であるADPRCの阻害剤であるニコチンアミドがPEの治療として有用であるか検討している。 平成24年度はアデノウイルス(1x10^9 pfu)を用いてsFlt-1を過剰発現した野生型(WT)非妊娠マウスにニコチンアミド(500 mg/kg/day)を経口投与することにより、ニコチンアミドがsFlt-1による血圧の上昇・尿中アルブミン排泄量の増加・腎糸球体毛細血管の内皮障害を改善することを明らかにした。ニコチンアミドの投与はsFlt-1投与と同時に予防的にはじめても、sFlt-1投与7日後すでに血圧上昇・蛋白尿などPEが発症してからでも血圧の上昇・尿中アルブミン排泄量の増加・腎糸球体毛細血管の内皮障害を改善した。ただし、sFlt-1投与開始後、5か月ですべてのマウスが死亡したが、ニコチンアミドの投与で生存率は上昇し、特に予防的投与により生存率は上昇し、ほとんどすべてが観察期間の5か月生存した。このことから、PEのハイリスクの妊婦にはニコチンアミドの予防的投与が有効であると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験1:今まで我々はsFlt-1の過剰発現をアデノウイルスを用いて行ってきたが、アデノウイルスそれ自体が肝障害を起こすためPEによる肝障害の評価が難しい。そこでMurphyらがラットで行った方法にならって、マウスsFlt-1タンパク3.7 μg/kg/dayを浸透圧ポンプを用いて投与することにより過剰発現させ、肝機能の評価ができるようにする予定であった。しかし、ラットと同様な体重あたりのsFlt-1タンパク投与ではマウスにおいては、ほとんど血圧の変化を認めなかった。sFlt-1タンパク100 μg/mouse/7dayを浸透圧ポンプを用いて投与しても明らかな血圧の上昇を認めなかった。その理由は不明であり、現在検討中である。そのため、我々が今まで行ってきたようにアデノウイルスを用いてsFlt-1を非妊娠野生型マウスに過剰発現させ、ニコチンアミドがsFlt-1による血圧の上昇・尿中アルブミン排泄量の増加・腎糸球体毛細血管の内皮障害を改善することを明らかにすることができた。 実験2 :主なADPRCであるCD38の欠如がPE様所見を改善するかどうかをCD38-/- sFlt-1過剰発現マウスがCD38+/+ sFlt-1過剰発現マウスと比較して、実験1と同様な項目において改善しているか検討している。こちらの実験もアデノウイルスを用いてsFlt-1を非妊娠マウスに過剰発現させて、現在進行中であり、数か月以内に結果が出る予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
実験1:ニコチンアミドを用いた実験 妊娠時でもニコチンアミドがPE様変化を抑制するか、また、ニコチンアミドの胎児の成長への影響を調べる。即ち、メス野生型マウスにラジオレメトリーを埋め込み、5日後、コントロールの血圧測定を7日間行い、マウスをオス野生型マウスと交配させる。妊娠8日目にアデノウイルスを用いてsFlt-1の過剰発現を開始し、以後非妊娠時と同様に解析する。さらに、安楽死時の胎児の数・生死を確認、体重を測定、解剖する。また、胎盤の数・重さを明らかにし、胎児・胎盤の発育へのニコチンアミドの影響を検討する。 実験2:CD38のノックアウトマウスを用いた実験 CD38欠損が非妊娠時のsFlt-1過剰発現によるPE様の表現型を改善することが明らかになった場合、妊娠時でもCD38欠損がPE様変化を抑制するか、また、CD38欠損の胎児の成長への影響を実験1と同様に調べる。CD38は主なADPRCであるがCD157もADPRC活性がある。CD38KOマウスの腎を含めたほとんどの臓器ではCD157の発現は野生型の30%と減少している(Am J Physiol 2009)。従ってCD38欠損による表現型がCD157で代償されている可能性は否定的であるが、CD38とCD157のダブルKOを作らないとAADPRCが高度に阻害されたときに害がないかどうか明らかにはなりにくい。これらの遺伝子は同じ染色体上に40kbのみの距離をおいて位置しており、交配によりダブルKOを作成するのは不可能である。そこで、次善の策としてCD38-/- sFlt-1過剰発現マウスにニコチンアミドを投与して実験1同様に実験する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
計画の変更を伴わない。 次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成25年度請求額とあわせ、平成25年度の研究遂行に使用する予定である。
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