2013 Fiscal Year Annual Research Report
ADPリボシルシクラーゼの妊娠高血圧腎症における役割
Project/Area Number |
24659409
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 信行 東北大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (40588456)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 恵美子 東北大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (20466543)
佐藤 博 東北大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (60215829)
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Keywords | 高血圧 / 蛋白尿 / 妊娠 / 流産 / 子宮内胎児発育不全 |
Research Abstract |
妊娠高血圧腎症(preeclampsia, PE)は妊娠によって発症する高血圧で、蛋白尿をともなう。病的胎盤から放出された可溶性VEGF受容体1(sFlt-1)が、母体および胎児を循環し、VEGFやPlGFのantagonistとして作用することで、PEをおこす。しかし、その根本的治療はなく、胎児および胎盤の出産で、sFlt-1産生源である胎盤を除去することにより、母子を救済しているのが現状で、未熟児の増加につながっている。多くの降圧薬は妊婦に禁忌となっており、妊婦に投与が許されている降圧薬で十分母体の降圧を得るのが困難なことも多い。また、母体の降圧が得られても、PEの根本的病態である血管内皮障害(endotheliosis)が改善しないため、胎児・胎盤への血流が減少してしまい、胎児の予後が悪化することが多い。 エンドテリン(ET-1)やアンジオテンシン(Ang II)はPEを悪化させるが、その受容体の阻害薬は奇形をもたらす。サイクリック ADPリボースはET-1やAng IIによる細胞内Caの動員に重要であることが知られており、我々は、その合成酵素であるADPRCの阻害剤であるニコチンアミド(Nam)がPEの治療として有用であることを明らかにした。 アデノウイルスを用いてsFlt-1を過剰発現した野生型マウスにNamを経口投与することにより、NamがsFlt-1による血圧の上昇・尿中アルブミン排泄量の増加・腎糸球体毛細血管の内皮障害を改善することを明らかにした。Namの投与はsFlt-1投与と同時に予防的にはじめても、sFlt-1投与7日後すでに血圧上昇・蛋白尿などPEが発症してからでも血圧の上昇・尿中アルブミン排泄量の増加・内皮障害を改善した。また、Namは流産・早産を予防して、妊娠期間を延長し、子宮内胎児発育不全を改善することが明らかとなった。
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