2012 Fiscal Year Research-status Report
次世代シークエンサーを用いた多発性嚢胞腎の新しい遺伝子診断法の確立
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24659420
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
望月 俊雄 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (00277120)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 多発性嚢胞腎 / ADPKD / PKD1 / PKD2 / 遺伝子変異 / 次世代シークエンサー |
Research Abstract |
根本的治療が確立されつつあるADPKDに対して、その早期診断ならびに除外診断を行うための遺伝子変異解析を、次世代シークエンサーを用いることで迅速で精度の高いものにしようとする研究である。 本年度は、ADPKD患者約100人から同意が得られ、血液からゲノムDNAの抽出を行った。まずそのうちの10人の患者に対して、PKD1ならびにPKD2遺伝子領域を含むゲノムの特定領域をターゲットDNA濃縮法により選別し、「次世代シークエンサー」にてシーケンシングを行った。解析終了した8人中6人にPKD1遺伝子の遺伝子変異が検出された(検出率75%)。その内訳は、1~4塩基の欠失・挿入が5人、ナンセンス変異が1人に認められた。1塩基の欠失以外は、いずれも複製領域から検出できた。検出できなかった2人のうち、1人では、後述するキャピラリー・シークエンス法にてミスセンス変異が検出された。 またPKD1遺伝子ならびにPKD2遺伝子のエクソン部分のPCR産物をキャピラリー・シークエンス法にて遺伝子変異解析を行った。PKD2遺伝子解析においては、29人の解析が終了しており、その中で3人の遺伝子変異が検出された(検出率10%)。内訳は、1塩基欠失、1塩基挿入、ナンセンス変異であった。また、PKD1遺伝子の単一コピー領域(エクソン35~46)では、33人の解析が終了しており、その中で4人の遺伝子変異が検出された(検出率12%)。内訳は、2塩基欠失、1塩基挿入、スプライシング変異(2人)であった。さらに、PKD1遺伝子の複製領域(エクソン1~34)では、4人の解析が進行中であり、2人の遺伝子変異が検出された(検出率50%)。2塩基欠失、ならびにミスセンス変異であった。 ターゲットDNA濃縮法による解析が成功したことが本年度の最も大きな成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
6つの偽遺伝子と相同性が非常に高い(95~98%)複製領域をもつPKD1遺伝子をターゲットDNA濃縮法によって解析できるかどうかが最大の懸念材料であった。しかし現時点で8人中6人(75%)という高い検出率を得られたことから、初年度での達成度は高いと思われる。 さらに、キャピラリー・シークエンスでは、PKD1遺伝子の複製領域(エクソン1~34)の解析が進行中であるものの、既に50%の検出率を得ており、方法論的には問題ないと考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度と同様に、ターゲットDNA濃縮法による次世代シークエンス解析ならびにキャピラリー・シークエンスを行っていく。可能であれば、当初の目標である50人でなく、100人まで解析し、両者の方法を比較検討していきたい。 両者ともに検出できない患者については、大きな欠失や挿入なども考慮し、さまざまな解析方法を取り入れて、より精度の高いADPKDにおける遺伝子診断法の確立を目標とする。 日本人ADPKD患者における遺伝子変異のタイプ、頻度ならびに遺伝子型と表現型の相関(genotype-phenotype relationship)についても検討する。遺伝子変異と臨床的重症度(末期腎不全年齢など)との遺伝子型・表現型の相関性についての解析も行いたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度と同様に、ターゲットDNA濃縮法による次世代シークエンス解析ならびにキャピラリー・シークエンスを行っていく。可能であれば、当初の目標である50人でなく、100人まで解析したいと考えている。
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